Thursday, 21 October 2010

記念写真 撮るのは日本人だけ?



フジファブリックの「記念写真」は、少年時代に野球部に所属していた男の子が、最後のお別れの前に撮った記念写真を見ながら思いを巡らす、という曲です。
歌詞は志村正彦くん、曲はギターの山内総一郎くんが書きました。

野球少年だった志村君は、「野球を題材にした曲を作るのは難しい。」と言いながらも、「ベースボールは終わらない」などを数曲かいています。

「限定されない、聴き手によってとらえ方が変わる歌詞」を意図的に書いていましたので、この曲の中でも特にマフラーの似合う子が女の子だとは書いていないのですが、なんとなく少年の淡い恋心が伝わってきます。
マネージャーさんかなんかでしょうか。(「電話の一つもしたのなら 何が起きる?」というフレーズが、「相手は女の子」と思わせる原因かも?女の子は男の子と比べて、現実的でシビアですから・・・。「好きだったあの子に連絡取りたいけど、もう彼氏がいるのかもしれないな。いたら、やっぱり僕から連絡がくるのは気まずいのかな。でも、どうしてるんだろう。」などと、いろいろ考えている男の子が目に浮かぶようです。)


日本の中高校野球部には、「マネージャー」という役の生徒が数人所属しています。
スコアボードの記録、チームの成績計算、選手の体調管理などをするのが仕事です。
野球部という男の世界に数名だけいる女子マネージャーは部員の憧れの的、というのがお決まりで、日本のマンガにも多く登場します。

フジファブリック「記念写真」の中の少年。
月日は流れ今では大人になって、昔の野球部時代のことを懐かしく思い出しています。部活動が終わる(卒業でしょうか)と同時にお別れになってしまった「あの子」。
大人になった今、石につまづきながらも一生懸命がんばる日々の合間、あの時撮った記念写真を見ながら「あの子」に思いを馳せる僕。

この曲にもフジファブリックの曲の中枢でもある「諸行無常」(常にこの世のものやことは変化していて、何一つそのままでいることはない)、「もののあはれ」(どうにもならない物事に対するしみじみとした感情)が歌われています。

クリックすると新しいウィンドウで開きます

これは、1864年に徳川幕府の遣欧使節団がエジプトのスフィンクスの前で撮った記念写真です。池田筑後守長発ら一行・侍三十四人は、外交のためヨーロッパを訪問し、その途中エジプトのギザに立ち寄りこの写真を撮りました。
ちょんまげ姿の日本人が20数名写っています。
カメラが日本に来てすぐの時代から、日本人は記念に集合写真を撮っていたのです。

西欧の風刺画やアニメ(「ポパイ」)、映画(「ティファニーで朝食を」)には、眼鏡をかけ首からカメラをかけた出っ歯の日本人が登場しますが、一昔前の西洋人にとって日本人はそのような印象だったのでしょう。

「写真を撮るのが大好きな日本人」という説、その背景にはなにがあるのでしょうか。

イギリスの学校ではSchool Photoと称し、毎年度末に全校生徒と職員が一緒に撮る記念写真らしきものがあります。また、日本の生徒手帳に貼ってあるような、制服を着た個人写真というのも撮ります。
植民地時代のフロンティア精神を受け継ぐ、好奇心旺盛なイギリス人は、バッグパック一つで世界中を歩き回り、目に留まったものの写真を撮るのも大好きです。

ただ、観光名所で整列して撮るという光景は、あまり見かけません。

私の個人的な見解ですが、これは日本人の「記録好き」に関係しているのではないでしょうか。

その昔、国司(朝廷から諸国に赴任させた地方官)といわれる人たちが地方へ行き、読み書きのできる庄屋たちにその国(地方)の出来事を記録させました。その片田舎で記録された膨大な量の日誌は、世界の動きや出来事(アメリカで起こった地震、津波などまで)が分かるほど正確なものでした。
また江戸時代、日本にきた外国人は日本の文盲率の低さに驚きました。日本では寺子屋が発達していたおかげで、小さな村でも子供の頃から読み書きそろばんを徹底して教えこまれ、西欧諸国のどの国より文盲率が低かったのです。




日本語における文字の発達も、一般市民が読み書きを習いやすい一つの要因でした。音をそのまま表記できるひらがな、かたかなは、漢字だけですべてを表記する中国語などと比べ、格段に覚えやすく使いやすいのです。
記録としていろいろなものを残しておくという習慣は、文字の発達により、階級を問わず定着したのだと思います。

その「記録好き」な性分に写真は最適です。
皆で整列して撮れば、誰がこの時にいたのかの証明にもなります。

現代日本人の「ブログ好き」も、こんなところにルーツがあるのでは!?。

また、諸行無常を常日頃感じている日本人は、今この一瞬を写真に残しておきたいという気持ちが、他の民族より強いのかもしれません。
刻一刻と変化している今この時を、あの場所で作った思い出を、目に見える形でとっておきたい。
記念写真の背景には、そんな日本人の感性があるような気がします。

フジファブリックの「記念写真」。
日本人のみならず、世界中で皆の心を打つ名曲です。


No comments: