Tuesday 25 November 2014

山梨の里山


里山とは、人里近くにある人間の影響を受けた山や森林のことです。深山(みやま)の対義語であり、人間の手が入ることが生態系に組み込まれている、比較的低い山や森林をさします。

人の暮らしとそこに息づく生物、それを育む自然が調和する環境は国や地方によって異なりますが、日本の里山には独特の美があふれています。

先日、「里山資本主義」の著者である藻谷浩介さんに関する記事が、山梨日日新聞に掲載されていました。(「藻谷浩介さんが語る『山梨の里山』」山梨日日新聞 2014年11月14日付)


世界遺産となった富士山や、八ヶ岳、南アルプスに抱かれ、更に東京という大市場が隣にあるという好条件を満たす山梨県。それでも山梨が抱える弱点があると藻谷さんはいいます。

「山梨の人は"おしゃれなもの"を求めて東京に行きたがる。山梨に"おしゃれなもの"を求めてくる人の気持ちが全くわかっていない。」
(前述記事より引用)

藻谷さんのいう"おしゃれなもの"とは、「山梨に来なければ得られない体験」のこと。地元の人にはそこにあって当たり前のものが、都会で暮らす人にとってはお金を払っても手に入れたい価値があるものだというのです。

山梨に移住してくる人が増える一方、「山梨の里山の強みに気付いていない地元の人が結構いる。」と、藻谷さんはいいます。


常住人口調査で、山梨県の人口は27年6ヶ月ぶりに84万人を下回りました。(「人口増減、市町村は何を思う」山梨日日新聞 2014年11月19日付)
ピーク時の2000年と比較すると6.2%減で、市町村単位でみると9割近くが減少の一途をたどっています。

都会にはない、山梨の強みとはなんなのか。

出荷するには半端な農作物。
耕作放棄地や鳥獣。
自然の景観。

一見金銭換算すると価値がなさそうな資源こそが、山梨の強みになりうるというのです。

「山梨あるある」でも面白おかしく取り上げられることが多いのですが、山梨県の小中高の校歌には、「山」を讃える歌詞が頻繁に登場します。

四方を山に囲まれた盆地という地形条件に加え、車で少し走れば街の中心地からもすぐに山に行ける距離に人々が暮らしているので、日常の風景の中には山や緑があふれています。

「熊・猿・イノシシの目撃情報」を防災無線で知るのも、山梨県民にとって珍しいことではありません。先日も上吉田浅間神社南側付近やパインズパークで熊が目撃されたと、富士吉田市の防災無線で注意喚起をしていました。


富士吉田を訪れるフジファブリックファンは、いまだに後を絶ちません。
皆さん、何を求めて富士吉田の地を訪れるのでしょうか。

志村正彦さんが育った街を自らの足で散策し、「いつもの丘」に上り、富士山から吹き降ろしてくる澄み切った空気を吸って、冷たい水を飲んで、吉田のうどんを食べて、街の人達と触れ合い、皆さんは何を感じるのでしょう。

そして、何を思うのでしょう。

毎回富士吉田を訪れる度に、フジファブリックの歌詞に描かれる花や月、星などが、より鮮明になって響いてくるような気が私はしています。

皆さんにとって、富士吉田はどんなところですか。


藻谷さんは、お話をこのように締めくくっています。

「山梨の人はもっと外に出て、山梨の魅力に気付くべきです。」
「山梨の将来は、みなさんがどのくらい外に行って勉強するかということにかかっています。」

富士吉田で生まれ育ち、高校卒業を機に上京し、音楽の技術を学んで天稟の才に磨きをかけ、多くの素晴らしい曲を遺してくれた志村君。山梨独特の里山を身近に感じながら育ったことは、とても大きかったと思います。

山で化石の貝を掘った話、樹海(これは、里山というより大自然!)で自然音を録音した話など、志村日記にも登場します。

地元にいながら書いた曲ばかりではなく、ふるさとを離れ心象風景を元に作った歌詞も多かったでしょう。「茜色の夕日」は、そうして書いた代表のような曲ですね。


2013年7月15日、新倉浅間神社で開催されたイベントで、正彦君のご友人からの手紙を紹介させて頂きました。2006年の7月頃、「地元にいつか帰りたいけど、しっかり音楽で恩返しできるまでは帰れない。いつかは地元でスタジオを開いて、若いミュージシャンを応援してあげたい。」と、志村君はご友人に語っていたそうです(ご友人のお手紙より)。

山日の記事を読んで、この手紙を久しぶりに思い出しました。

資本主義における貨幣価値などには全く換算できないものを、フジファブリックから頂いていることに感謝です。

今日の一曲は、心象風景から生まれたフジファブリックの代表曲「茜色の夕日」です。


Monday 17 November 2014

「若者のすべて」 in 槇原敬之 Listen To The Music The Live うたのお☆も☆て☆な☆し 2014 パート2

前回からの続きです。

Mr. Childrenの桜井和寿さんと音楽プロデューサー小林武史さん率いるBank Bandが「若者のすべて」をカバーしたときに、(「沿志奏逢 3」2011年7月6日リリース)多くのミスチルファンの方々がBank Bandを経由して、フジファブリックにたどり着きました。


その後、ミスチルファンでフジファブリックファンにもなったという皆さんと色々な機会でお話することがあり、本物だけがもつ曲の力と、カバーするミュージシャンの力の両方を度々実感しました。

来年デビュー25周年を迎える、日本を代表する著名なミュージシャンの一人である槇原敬之さんを経由して、ぜひ多くの方々にフジファブリックへ繋がって頂きたいと切に願って止みません。


音楽は「ご縁」です。

いくらラジオで聞いても、テレビで見ても、友達が紹介してくれても、「縁」がうまく繋がっている瞬間でなければ、本当の意味で「聴こえて」こないのです。それはフジファブリックに限らず、音楽全般においていえることだと思います。

出会いはいつだって、ひょんなことから始まります。

好きなアーティストが好きなミュージシャンだった。
大好きだったあの子が好きなミュージシャンだった。
バイト先でいつも流れてた。
親がよく聞いていた。

そんなこと、ありますよね。


カバーというのは、そういう出会いを大きく広げる機会のひとつだと思います。ミュージシャンが有名か有名でないかは、縁という観点からみればさほど関係ないと思います。

高校生バンドから世界のスターまで、多くのアーティストを通して、これからも大勢の人にご縁が繋がっていってくれますように。

フジファブリック 志村正彦という人が、確かにこの世にいたこと。
多くの素晴らしい楽曲を遺していってくれたことを、大勢の人が知って下さいますように。

そしてフジファブリックの音楽が多くの人に感動を届けられるよう、沢山のご縁で繋がりますように。

心から願っています。

今日の一曲は、「若者のすべて」です。
検索を通していらした槇原ファンの皆様、原曲でありますフジファブリックの「若者のすべて」を、どうぞ一度ご視聴ください。

槇原さんとは違う魅力があふれる一曲です。


Tuesday 11 November 2014

「若者のすべて」 in 槇原敬之 Listen To The Music The Live うたのお☆も☆て☆な☆し 2014 パート1


「赤黄色の金木犀」について書いている途中ではありますが、今日はDVDを一つご紹介したいと思います。

以前、フジファブリックの歌詞に登場する「花」の魅力について色々考えていたとき(「志村君と花」 2013年10月29日付)、槇原敬之さんの「世界に一つだけの花」が頭に浮かび、併せてご紹介しました。

偶然にも、2014年9月24日リリースの「Makihara Noriyuki Concert Tour 2014 "Listen To The Music The Live うたのお☆も☆て☆な☆し 2014"」(詳しくは、槇原敬之 公式ホームページ DVDをご覧下さい。)で、フジファブリックの「若者のすべて」がカバーされました!

このニュースをきいた時、頭の中の私だけの個人史で「新」と「旧」がコラボしたような、なんとも不思議で温かい気持ちになりました。

私達の世代にとって槇原さんの音楽は、「テレビをつけても、街を歩いていても、流れていた曲」という表現がぴったりで、ドラマの主題歌、甲子園の入場行進曲、紅白歌合戦、レコード大賞など、本当によく耳にしました。
「その時に流行っていた音楽を聞くと、当時を思い出す」という体験をさせてくれたミュージシャンも、槇原さんが初めてのような気がします。

ホームシックだったとき、槇原さんの曲をよく聴いたなぁ・・・。


「Listen To The Music」(2014年11月現在、3作がリリースされている)というセルフプロデュースによるカバーアルバムから、「時代やジャンルにとらわれず様々な音楽を聴いてほしい」という想いが詰まった初のカバーライブDVD。歌謡曲から文部省唱歌、J-POPまで、幅広いジャンルの音楽が彼自身によって選曲されています。

ちなみに「Listen To The Music 2」は「生まれ変わった時にもまたききたい曲!」、「Listen To The Music 3」は「多大な影響を与えて下さった方の楽曲を、感謝を込めてカバーしたい」というテーマの下、製作されました。

DVD収録曲22曲中、既存のカバーアルバム3作唯一の未収録曲として披露されたのが、このフジファブリック「若者のすべて」です。

槇原さん流にいう「シークレット Listen To The Music」。

「若い人たちの曲でも、すごい良い曲だと思ったら勝手に歌っていた。スタッフと『やりましょう!』ということになった。」

まず曲を聴いて率直な感想ですが、私は槇原さんの歌う「若者のすべて」、とても素敵だと思いました。個人的に、大好きです。

まず歌詞をとても大切に、丁寧に歌って下さっていることに感謝です。

「出会えて・・・、この曲がある時代に生まれて良かったな、と思えた曲。」
「(この曲を作った志村君が亡くなったという事実を知り)僕にとってはバッハとかベートーベンと同じ気持ちです。」
「すごい良い曲。最初に聞いたとき、『なんだよ!この曲!』泣いちゃいましたよ、僕。」

MCで語った曲への想いが、一語一語を丁寧に歌う歌い方から伝わってきます。

映像をみていると、ステージ下方に歌詞を映し出す小さなスクリーンらしきものが見えますが、歌詞を間違わないように、曲にたずさわる方達に失礼のないように、細心の注意をはらっているのがわかります。
そのスクリーンを見ているのが観客にはわからないようにしているのも、さすがプロの心遣いです。


また、曲に槇原さんの声の質がとても合っていると思いました。
透明感のある、澄んだ声で軽やかに歌う「若者のすべて」は、志村君とはまた違う雰囲気を感じます。

PVで使われた白っぽいグレーの背景、メンバーの着ている黒、グレー、白の洋服の色。志村君の声と金澤さんの奏でる淡々としたピアノの音と相まって、視覚、聴覚を通して独特な印象を与えるフジファブリックの「若者のすべて」ですが、オリジナル曲のもつ魅力をできるだけ壊さず、自己流に走らず、独りよがりにならないように、でも槇原さんの色が出ていて、それがとても彼らしいと思いました。


私は時々、「フジファブリックの曲には魔法がかかっているのかな。」と思うときがあります。
志村君がかけていって、志村君にしか解くことのできない「魔法」。

フジファブリックの楽曲(志村君の作ったもの)は、どなたが歌っても素晴らしいことに変わりはないけれど、志村正彦さんがボーカル、フジファブリック演奏が、一番伝わってきて心に響く。単刀直入に言ってしまえば、一番好きです。

それが声の質によるものなのか。
声域なのか。
楽曲の音域なのか。
息遣いなのか。
息継ぎなのか。
曲に込められたメッセージの発信源である人の特権なのか。
聴き慣れているからなのか。

それとも、もっと違う「なにか」なのか。

理由はわからないのですが、それはまるで「魔法」がかかっているような・・・。

音楽は完全に趣味と嗜好の問題なので、私の個人的な意見ではあります。

でも槇原さんの歌う「若者のすべて」は、ステージ上で使われた青色、水色、桃色の照明も、静かに真剣に聴いている観客も、バックバンドも、槇原さんも、すべてが一体となって「若者のすべて」槇原バージョンを見事に作り上げていると思いました。

(次の記事に続きます)

駆け足一時帰国

更新が滞り、申し訳ありません。

先月は10日足らず、駆け足帰国をしてきました。
前回の帰国時はうだるような暑さでしたが、今回は朝晩の冷たい空気に日本の深まる秋を感じました。日中は暖かいのに明け方には冷え込んでくるのが、布団の中でもわかります。

いよいよこたつが恋しい季節ですね。

10月19日には東京へ行く用事があったのですが、歩いているとあの懐かしい甘い香り!がしてきて、思わず金木犀の木を探してしまいました。

山梨ではとっくに金木犀の花は終わり、富士山初冠雪の季節。
今年は10月16日に、「富士山初冠雪」が甲府気象台により宣言されました。

初冠雪の定義は、「夏が終わった後、山麓の気象官署から見て、山頂付近が初めて積雪などで白く見えること」だそうです(甲府地方気象台ホームページ参照)。急速にテクノロジーが発達する時代、「人の目で観察できるかどうか」を基準にしている気象庁の観測法に、ちょっとホッとしてしまいます。

でも16日は、本当に寒かった!

雨に煙る山々の向こうに全く富士山が見えず、「もしかしたら、富士山で初雪が降っているかもしれないね。」と、皆で話していたらやはり降っていたのでした。

富士山に初雪が降ると、吹き降ろしてくる風が雪の冷気と湿り気を帯び、郡内地方(富士吉田のある地方)は一気に冬に向かって加速します。

では、記事の更新始めます!