Tuesday, 9 November 2010

フジファブリックと月 

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前回の記事に続いてまたまた季節はずれで恐縮ですが、今日はフジファブリックと月について考えてみたいと思います。
以前この記事で、「お月様のっぺらぼう」と月について書いたことがありましたが、今日は続編です。

フジファブリックの曲には、実に多くの「月」が登場するのをお気づきになりましたか?
「星」より圧倒的に多いですよね。

アラモードのジャッケットには月が描かれていますし(裏には月の写真)、曲名に出てくるものだけでも「お月様のっぺらぼう」「ムーンライト」「同じ月」。
歌詞に月が登場する曲も含めれば、沢山あります。

「午前3時」の満月、「浮雲」の満ちる欠ける月、「環状七号線」のおぼろ月夜、「打ち上げ花火」の微睡むお月さん、「地平線を越えて」の澱む月、「マリアとアマゾネス」の穏やかな月見の夜、「Anthem」の逆さになってしまった三日月・・・。
志村君の書く歌詞の中で、月は様々な役割をしていました。

志村君はソングライターですから、自然の中にある美しいものを敏感に感じ取る感覚が、私たちよりも鋭かったに違いありませんが、元々日本人にとって「花鳥風月」という言葉が象徴しているように、「月」は古代から美しい自然を彩るものとして欠かせない存在でした。
日本では、欠けてもやがて満ちてくる月は、再生の象徴と考えられ、王朝貴族たちに親しまれていました。

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日本には、月を楽しむ目的のために作られた建物があります。
桂離宮です。
17世紀、京都の西を流れる桂川のほとりに、宮家の別荘として桂離宮は建てられました。
簡素な中に洗練された美しさを持つ、日本建築の最高傑作の一つといわれています。

伝統的な日本建築は、外の自然との一体感を大切にしますが、この桂離宮もそれぞれの部屋から月を楽しむために考えられた壮大な月見の装置だったといわれています。月の美しい10月。
まず月波楼から月を眺め、月が中空に昇ってきたら別の棟の月見台へ。
ここでは池の水面に月が映り、2つの月を楽しめます。

月を愛でる日本人の心が伝わってきますね。
(数ヶ月前にNHKで桂離宮の特集をやっていましたので、そちらを参照致しました。)

仲秋の名月を鑑賞する習慣は、すでに唐代の中国で行われていて、野菜や果物などを供えて月を拝み、鑑賞したという記録が残っています。これが、平安時代に日本に伝わり、当初は貴族階級び間だけで月を鑑賞していましたが、やがて一般庶民にまで広まって全国的な行事となりました。

しかし平安以前、月は畏怖の象徴で、月を眺めることを避ける風習があったそうです。
「日本書紀」にあ月夜見尊(つくよみのみこと)が、保食神(うけもちのかみ)を殺したことで姉の天照大神(あまてらすおおみかみ)に疎まれ、一日一夜を隔てて住むことになったとあります。
月は死と再生を繰り返す不老不死の世界と見て、若返りの水である「をち水」が存在するという信仰もありました。原始神道の神話の世界です。

ファイル:Kintengu 08s.png

花札にも「坊主に月」という綺麗な絵柄があります。
外国人の皆さん、花札(花カルタ)をとても美しいと言って下さいますが、その中でも月は高得点の美しい絵柄札として扱われます。



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西洋ではどうでしょう。
イギリスに伝わるNursery Rhyme(アメリカや日本では、「マザーグース」として知られています)にも、4,5曲ほど月が登場しますが、「月の美しさを愛でる」という訳ではありません。牛が月を飛び越している曲は日本でもよく知られていますが、やはり言葉遊び的なものでしょうか。

明日はいよいよ、フジファブリックの曲に登場する「月」を詳しく見てみたいと思います。
今日は、ムーンライトをお聴きください。

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