Tuesday, 16 November 2010

バウムクーヘン ドイツ人も大好物?

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4th アルバム「Chronicle」の最初の曲、「バウムクーヘン」。
スウェーデンで録音されました。

富士吉田が色濃く残る初期アルバムに比べ、「Chronicle」は東京で送るミュージシャン生活から生まれた苦悩、孤独、寂しさが溢れているため、涙なくしては聴けないファンも多いのではないでしょうか。
このアルバムで一貫して歌われているものを暗示するような、そんな一曲目です。

甘いもの好きで知られている志村正彦くん。
スタジオに甘いお菓子の差し入れがあると、真っ先に飛びついたそうです。
フジファブリックの曲名にも、「水飴と綿飴」「Chocolate Panic」「Strawberry Shortcakes」など、お菓子の名前が多いですよね。

「バウムクーヘン」は、ご存知の通りドイツの伝統菓子で、1680年頃、木の枝に種を付けてパンを焼いたのが始まりといわれています。芯になる棒(昔は木)の部分に少量ずつ種をつけて焼く、という工程を何度も繰り返し、約一時間かけてゆっくり、じっくり、焼き上げます。腕のいい職人さんが精魂込めて作りあげるからこそ、あの独特な木の年輪模様が生まれるのです。

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森の国ドイツが生んだ、木(バウム)のケーキ(クーヘン)です。

日本ではドイツ人のカール・ユーハイムが初めてバウムクーヘンを作り、大正8年、広島県商品陳列所(後の原爆ドーム)で販売しました。今では日本人に広く親しまれている、ドイツ菓子の代表格となりました。
ちなみに年輪の模様が長寿や繁栄を意味するとして、日本では慶事の贈り物として好まれますが、地元ドイツにはそのような風習はありません。「聞いたことはあるけど、食べたことはない。」という程度の知名度だそうです。
日本人の「食への好奇心」が、うかがえますね。

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志村君も、切り口の不思議な模様に心動かされ、年輪模様と自分の人生を重ねて見ました。
FAB BOOKの中で、「(バウムクーヘンは)年輪のように何層も重なることによってできるわけで、僕という人間もフジファブリックもいろんな人やものやことから徐々にいろいろなものをもらうことによって形になるんですよね。そういうことを歌ってます。」といっています。
「Chronicle」のアルバム製作のスタートは、「僕が生まれた時から」と言っていましたっけ。
そういう意味で、志村君の28年が詰まったアルバムを象徴するような曲だと思います。

世間の人が思う「自分」と、自分が思っている「自分」の間に生まれるギャップへの葛藤。
また自分の思う「自分」が、複数いることへの戸惑い。
人間は誰でも両極を持っているものです。(「恥ずかしがりやだけど、人に喝采をあびるのは好き」、「こつこつと努力するタイプだけど、人生の岐路に立つときはいつもリスクの大きいほうを選択する」など)
それも全部ひっくるめて自分で、そんな自分と一生つきあっていかなければならないんだと開き直るまでには、大きな葛藤があります。
取り巻く環境が徐々に自分を変えていき、自分が思っていた自分ではなくなってしまうような気がして、それが恐ろしかったり・・・。
そんな苦悩を、見事に歌った曲です。

「すぐに泣いたら損する気がして 誰の前でも見せません」
「嘘をついたら 罰が当たるから それはなるべくしませんが それもどうだか分からないんです」

このフレーズには、日本人独特の道徳観や倫理観が垣間見えるのですが、それはまた後日。

今日はアルバムとは違うバージョンで、「バウムクーヘン」をお聴きください。
下から撮る志村君、幼年時代のお顔みたいです。
素朴な音、ストレートなメッセージ、かわいいお顔に富士吉田にいた頃の、志村正彦君を想像していました。
感受性豊かで、繊細で、不思議な魅力を持った、かわいい男の子だったんだろうな。

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