金木犀の香りがすると、深まり行く秋を感じ、なぜか胸騒ぎがして焦ってしまう・・・。
日本でご覧になっている方は、残暑とは思えない暑さの中で、秋の日を思い出すのすら難しいかもしれませんね。
しかし、季節は確実に変わりつつあります。
金木犀は中国原産の常緑樹で、日本では普通に庭先で見られる木です。
幹や枝は濃い茶色で、深緑色の葉は厚みがあり硬く、枝に生い茂っています。
年中緑色の印象があるこの木ですが、10月中旬から下旬にかけて(私の故郷では)かわいらしい花を咲かせます。
赤黄色の小さな花(2ミリほど)が多数集まってボンボンのように咲き、その芳香たるや言葉では表現できないほどです。
中国本土では「桂花」と呼ばれ、乾燥させた花をお茶やお酒やお菓子に入れて、香りを楽しむ花として知られています。
独特の甘い香りが道に漂い、この季節になってやっと金木犀の木がそこここにあったことを思い出すという方も、多いのではないでしょうか。
そしてあまりに早く、散ってしまう花でもあります。
あの小さな花をちらちらと、次々に落としてしまいます。
そんなふうに、秋になると存在感を増す金木犀です。
フジファブリックの「赤黄色の金木犀」という曲。
私はこの曲ほど上手に、深まり行く秋の心情と風景を金木犀を通して表現した曲は、他にないと思います。
まず、曲の始まりに流れる志村君の弾くギターソロ、あの8部音符の連符が小さな金木犀の花がちらちらと散っていくのを、思い起こさせます。
続いて、「冷夏が続いたせいか今年は なんだか時が進むのが早い」という箇所があります。
冷夏が続くと、夏が終わるのも秋が来るのも早いため、自然と冬の到来も早くなる気がします。
冬が来る前に、「早く早く」と、気が急いてしまうのです。
気候風土がその土地に住む人々の性質に、多大なる影響を与えると私は思っていますが、季節が次から次へと変わる日本では、常に次にしなければならないことを考えなければなりません。
深まり行く秋の中、ボーっと何もしないで過ごしていたら、本格的な冬になった時には、衣食住に事欠くようになってしまうのです。
そのような先代の記憶が遺伝子に残されているためか、それが習慣として定着したのかは分かりませんが・・・。
それで、「僕は残りの月にする事を 決めて歩くスピードを上げた」のでしょう。
また、「影が伸びて」というのは、冬が近づき太陽があまり空高く上らなくなり、地平線に近いところを上下するために影が長く伸びるという現象が起きます。
これも緯度の高いところにある国独特ですね。
タイでは赤道に近いため、あまり気がつきません。
夕暮れ時に長く伸びる影、香る金木犀、無駄に胸が騒ぐ帰り道・・・。
日本人の秋の夕方です。
ぜひそんな風景を思い描いて、聴いてみてください。
志村君が、「ぜひ、外に出てこの曲を聴いてほしい。」と、言っていたこの曲。
フジファブリック、「赤黄色の金木犀」です。
2 comments:
はじめまして。ice blue normといます。
不二草紙さんのブログから来ました。
私は今年の7月にはじめてフジファブリックというバンドを知りました。CDを買ってからほぼ毎日愛聴しています。
私の住む関西ではちょうど今金木犀が香っています。この香りは好きなのですが、今年ほどこの香りに感慨を覚えたことはありません。それもフジファブリックのおかげです。
フジファブリックの歌の英訳というすばらしいことをされていて、尊敬します。英語を仕事にしている私にとってとても羨ましいです。
フジファブリックのよさをたくさんの人に知って欲しいと私も思います。
ice blue norm さん、はじめまして!
コメントをどうもありがとうございます。
関西では今、金木犀が満開なのですね。私も数十年ぶりにかいだあの香りに、志村君を思い出して切なくなりました。
まだまだしなければいけないことが山積みですが、これからも世界中で一人でも多くの人にフジファブリックの素晴らしい音楽を聴いてもらえるよう、私のできることをしていけたらと思っています。
将来は、このブログが世界のフジファブリックファンが集う場所になってくれたらいいなと、思っています。
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