Tuesday 21 September 2010

モノノケハカランダ 



モノノケは、「物の怪・物の気」と書き、死霊や生霊、妖怪の類と定義されます。
最近では、宮崎駿監督の「もののけ姫」が皆さんの記憶に新しいかと思います。

日本人における「モノノケ」の観念は古く、原始宗教であるアニミズム(自然・精霊崇拝)にルーツをおきます。アニミズムは世界中に見られ、アメリカン・インディアンやカナダのイヌイットはよく知られていますが、簡単にいうと「森羅万象に神や命や魂が宿る」というものです。
日本では縄文時代にはすでにこの信仰があったといわれ、神道の原型、「縄文神道」とも分類されます。


日本では、逢魔時(おうまがとき)や丑三つ時に黄泉の国との境界線が曖昧になり、「モノノケ」に出合うことが多くなると信じられています。逢魔時は現代の18時頃のことで、ちょうど昼と夜の移り変わる時であります。
丑三つ時は、午前2時ごろ。
「草木も眠る」丑三つ時に人目を避けて五寸釘でわら人形を木に打ち付ける呪いの儀式、「丑の刻参り」をご存知の方も多いと思います。
この二つの時間帯には、荒ぶる神が住まう場所「常夜」へ繋がるため、モノノケは俄然元気になり現世(うつしよ)に繰り出してくるのです。



モノノケの一種?つくもがみ(九十九神)は、長生きをした動植物や長期間使われた道具に宿る魂(神)といわれ、アイヌの民話にもよく登場します。
昔から使ってきた家財道具を粗末にして罰があたるお話は、全国各地にあります。

そしてフジファブリックの「モノノケハカランダ」ですが、この一見ロックな曲、実は日本文化が各所に光る名曲だと思います。

出だしは映画「ワイルドスピード」を思わせる、夜道で繰り広げられる車のレースを連想しますが、曲の中ほどから突然、日本のおどろおどろしさ満載になります(笑)。



夜闇の中、何かにとりつかれたかのように突然僕は獣になり、轟き、モノノケ相手に叫ぶ。
そしてその横では、ハカランダの木から作られた上等のギターが、無残にも焼け焦げ、唸り声をあげている。
そして自分でも止めようのない衝動にかられ、突き進む。


これが一体、外国人に理解可能なんだろうか。
この曲の後ろに流れる雰囲気を上手に説明するのは、至難の業でしょう・・・。
同じ文化圏に居る人にはなんの説明もいらないけれど、自然に伝わる。
これこそ「文化」なのです。

司馬遼太郎さんは、「文化とは体を包む空気のようなベールである。」といいました。
「普段はまったく意識していないが、それを侵食された時、大きな不快感が生じる。そして、改めてその有難さがわかるのである。」


この「ベール」をなんとか外国にいるフジファブリックファンに伝えたい。
それがこのブログの大きな試みであります。

世界の人に、フジファブリックの曲の中に脈々と流れる日本文化を通して、彼らの音楽をより深く理解し、愛してもらいたい。
心から願っています。


文化人類学には興味深い学説が多々ありますが、レヴィーストラウス博士の言葉を信じたいと思います。
「巧みに言葉を介せば、すべての文化がすべての民族に理解可能である。なぜならば、私たちは皆同じ人間なのだから。」

ちょっといつもと違う観点から、フジファブリック「モノノケハカランダ」、ぜひ聴いてみてください。


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