この2,3日、なぜかこの曲が頭から離れず、とうとう今日のトピックとしました。
フジファブリックの「セレナーデ」です。
虫の音と小川のせせらぎで始まり、ユニコーンの「働く男」の出だしをチラッと思い出しましたが(笑)、この幻想的な曲はフジファブリック独特の世界観となっています。
例にもれずこれも志村正彦くん作詞作曲の曲ですから、志村君独特の世界観と言ってもいいでしょう。
鼓笛隊の小太鼓を思わせるドラムスの音、バックに流れる虫の音、幻想的な歌詞と絡み合い、まるで夜更けに一人でヨーロッパの遊園地を歩き回っているような、そんな気持ちにさせてくれる曲です。
こんな素晴らしい曲を、あの名曲「若者のすべて」のB面に入れてしまうフジファブリック、偉大すぎます!
普通のバンドだったら、これをまたシングルで売るだろうに・・・。
セレナーデは音楽のジャンルの一種で、親しい女性や恋人を讃えるために夕方から夜にかけて演奏される音楽のことです。
多くの場合屋外で、一人の歌手と数名の楽師たちが携帯可能な楽器(ギターやバイオリンなど)で演奏するという形式をとります。
アニメ「トムとジェリー」ではトムがよくヴァイオリンを弾き弾き、セレナーデを歌いながらカワイ子ちゃんに言い寄るという場面が出てきますし、実際ヨーロッパのレストランではカップルで食事中に小楽団が各テーブルを周ってきて、希望すると自分の恋人にセレナーデを歌ってくれたりします。
やはりいまだに、セレナーデは西洋の印象が強いジャンルの一つかも知れません。
このフジファブリックの「セレナーデ」は不思議なことに、セレナーデがなんぞやを知らなくてもなぜか夜の屋外での情景が鮮明に描き出されるという、素晴らしい名曲です。
露骨な女性への愛のメッセージは見当たりませんが、大切なモノを淡々と静かに話してくれているような曲になっているような気がします。
バックに流れる虫の音によって、日本人は「秋の夜長」であるという設定をすでに作ってしまいますので、セレナーデの雰囲気を出すにはぴったりの効果音といえるかもしれません。
「木の葉揺らす風」の木の葉の音もこの虫の音によって、水分をたっぷり含んだ新緑ではなく、落葉前の乾燥しかかっている木の葉というイメージが強くなります。
やはり、四季で分けるとするとこの「セレナーデ」は秋の歌です。
中すぎに出てくる「眠りの森」という言葉によって、夜が更けていく感が一層際立ってきます。
また、A面シングル「若者のすべて」で夏の終わりを感じ、次が初秋を思わす「セレナーデ」。
さすがです。
その次がなぜ「熊の惑星」かについては、後日考えます(笑)。
そして最後、「そろそろ 行かなきゃな お別れのセレナーデ 消えても 元通りになるだけなんだよ」というフレーズ。
志村君を重ねていらっしゃる大勢のファンの方、そのコメントを読むとやるせない気持ちになってしまいます。
志村君が自分自身のことをさして言っているというより、もう少し大きい意味で、自然界でのサイクルのようなものを言いたかったのかな、と個人的には思いました。
人、犬、草花、木など、この世にいる全ての生きとし生けるもの。
その中の一つの命が尽きても、いつも通り次の日にはまた陽が昇り、月がでる。
そして、皆自然に還って行く。
その自然界の循環に日本人特有の諸行無常、もののあはれを感じます。
この「そろそろ行かなきゃな」に志村君が遠くに行ってしまうのではないかと、悲しみと不安にかられる気持ちも否めないのですが・・・。
フジファブリックの世界観に常に中枢としてある「もののあはれ」を、楽曲を作った本人、志村正彦くんに投影してみている方も多いのではないでしょうか。
生き物は皆「死」を避けては通れないけれど、命は死によって消えて無くなってしまうわけではなく、自然の中にまた違う形で存在し続けるのだと思います。
死は終わりではなくて、命がまた何か違うものに生まれ変わるための「通過点」のようなものだと感じるからです。
そして、魂は形を変えながら永遠に行き続ける・・・。
そんな気持ちにしてくれる「セレナーデ」、お聴きください。
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