Monday, 31 January 2011

スパイダーとバレリーナ 歌詞カードと日本人

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前回に引き続き「パッション・フルーツ」のB面、「スパイダーとバレリーナ」。
今日は歌詞をじっくりみてみたいと思います。

・・・とはいったものの、「Day Dripper」と同様フジファブリック・ワールド炸裂のこの曲も、特に日本の文化的背景の説明も必要なく、ファンひとりひとりの聴き方で聴くのが一番なので野暮な歌詞解説は不要です。
西洋のファンが日本語の歌詞を理解しながらこの曲を聴いたとき、私たちと同じような印象を受けるのかちょっと興味がわくところですが、なんとなく西洋の香りがするのはなぜなのでしょうか。



クリックすると新しいウィンドウで開きますまずフジファブリックには珍しく英語で、それも英文で曲が始まります。
でもそこは志村君、意図的に(?)カタカナ表記の英語になっております。個人的にはこのカタカナ表記の効果は絶大だと思っていまして、この2文があえて日本語表記になっているために曲全体が擬似西洋、完全に西洋になりきろうとしているのではなく、西洋的な空間を作りその空想西洋世界の中で曲を進行していくために設定する効果があるのでは、と感じています。

その後に続く「地図」も、「バレリーナ」も「曲がりくねった迷路」も「スパイダー」も、とっても西洋的ですよね。でも西洋そのものではない、ちょっと物語の中の一こまのような印象はこの擬似西洋世界の効果ではないでしょうか。

前回の記事にも書きましたように、「スパイダー」や「バレリーナ」という西洋の要素が強い登場人物が、よりこの曲を色鮮やかにしていますよね。

そして、「準備はオーケー こちらもオーケー いつでも行くから」の後に続くキーボード・ベース・ギターの奏でるあのクリシェ・ラインには本当に心が震えます!!
もう、やっぱり天才!!!
この曲の作曲は山内総一郎くんですが、あの美しいクリシェはフジファブリックが創造性と技術だけではなく、抜群の音楽センスがある証拠だと思います。
ところでクリシェ(Cliche) とは、作曲・編曲技法のひとつで、同じコードが長く続いているときに単調なコード進行パターンを避けるため基本のコードは変えずに、半音階や全音階の装飾的・慣用的なメロディーラインを創る(クリシェ・ラインといいます)手法のことをいいます。
メロディッククリシェ(単音を変化させていくクリシェ)とハーモニッククリシェ(二音以上を変化させていく)、ベースラインクリシェ(ベースにおかれる場合)など種類はありますが、フジファブリックのこのクリシェのセンス、大好きです。

あのクリシェ・ラインがあるからこそ、「くすぐったい ってな感じでアハハ」で始まるメロディーが明るく軽やかで・・・もう、最高です!




クリックすると新しいウィンドウで開きます2月22日、志村君の大好きな「猫」の日に、「志村正彦全詩集」が発売されます。
外国人のファンは「なんのこと?」と思っているかもしれませんが、これは今までフジファブリックが発表した音源の歌詞を詩集として一冊の本にまとめたものです。

日本ではCDに必ず「歌詞カード」というCDと同じサイズの小冊子がついています。輸入版CDを購入した経験がある方はご存知かもしれませんが、イギリス、アメリカ、そしてここタイでも全部のCDに歌詞カードがついているわけではありません。歌詞にそれほど細かいこだわりがないのかもしれませんが、耳で聴き取れなければそのままにしておいたり、よっぽど知りたければインターネットで調べたりして、それでおわりです。
アメリカのバンド、「Green Day」なんかは、ファンが歌詞を聞き取って投稿する「ファンの作る歌詞のサイト」が存在したりして、そこまでの手間をかけるんだったら歌詞カードをつければいいのに、と思ったりしますが。

日本の歌詞カードには、各曲の歌詞が作詞者の書いた通りに書いてあり、日本人はそれを読んで歌詞自体を詩として深く味わったり、ちょっと聞き取れない箇所なんかを確認したり、一人カラオケをしたり、といろいろに楽しみます。

そんな日本でも、歌詞を詩集として一冊の本にして売り出すというのは、なかなかあることではありません。それだけフジファブリック・志村正彦くんの書く歌詞は(「会いに」以外の曲はすべて志村正彦くんの作詞です)、文学的要素の強いものだと思います。

「スパイダーとバレリーナ」、まず歌詞を見てから曲を聴いたらまた違って聴こえたかな。外国人のファンの皆さん、歌詞の英訳が全曲終わったら「英語版 志村正彦全詩集」として、歌詞のPAGEだけ見てみるのも、また趣が違う楽しみ方ができると思います。

今日の一曲は、もちろんこちら。


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