Monday, 23 May 2011

甲州名物 おほうとう

クリックすると新しいウィンドウで開きます

2010年9月、第5回B級グルメ日本一に、山梨県の「甲府鳥もつ煮」が輝いたのは、皆さんの記憶に新しいかと思います。
甲府ではおなじみの甘辛味鳥もつ煮ですが、郡内でもおなじみの味なのかどうかがわからないので、今日は山梨県全域で食べられている甲州名物「ほうとう」についてご紹介させていただきます。

山梨の郷土料理「ほうとう」。
2007年には、農林水産省により各地に伝わるふるさとの味の中から決める「農山漁村の郷土料理百選」の中の一つに選ばれています。


小麦粉を練り、ざっくりと切った太くて平たい麺を野菜と共に味噌仕立ての汁で煮込んだ料理です。地域によっては、小麦粉以外の穀物から作られたり、すいとん的な小塊も見られることから、必ずしもうどん状の長い形であるとは限らないそうですが、私はまだお目にかかったことがありません。
地元民にとってほうとう(地元ではなぜか尊敬・丁寧語の「お」をつけ「おほうとう」という。尊敬に値する食べ物だからでしょうか)は、基本的に外で食べるものではなく、「家庭で作って食べるもの」です。多くの場合、観光客向けのほうとうチェーン店に行っても、自分の家の味と違うので、「あまりおいしくなかったね。」と、帰ってくることの方が多いのです。

やはり、うちのおほうとうが一番!と、皆が思っているわけです。


富士北麓の郡内地方には、ほうとうと同一の粉食文化の起源を持つ郷土料理「吉田のうどん」があります。志村君の大好物で知られているため、フジファブリックファンにはほうとうよりおなじみですね。
こちらの「吉田のうどん」、家庭の味が味の基本となっているほうとうと違い、通常、家で作って食べるものではなく、自分の好みにあった「いきつけのお店」で食べることのほうが多いのも特徴です。

今日は私の祖父が、生前こよなく愛し、元気な頃は自分で麺まで打っていた(一昔前は、みんな自宅で麺を打ったそうです)我が家のほうとうのレシピを、ご紹介致します。肉や魚が入らないので、ベジタリアンにもお勧めです。

クリックすると新しいウィンドウで開きます
  1. 大きめの鍋に水を入れ、だしを加える。
  2. 沸騰したら、里芋、大根、にんじん、かぼちゃなど火が通りづらい季節の野菜をいれる。
  3. 柔らかくなってきたら、ほうとうの麺をいれる。長ねぎ、白菜、きのこ類など火の通りやすい野菜と油揚げをいれる。
  4. 麺と野菜が柔らかくなったら、味噌をいれる。味噌汁より少々濃い目にいれること。

季節の野菜であれば、何を入れてもいいのですが、我が家のレシピの基本は上記の野菜です。とはいっても、ごぼうが入っているのはみたことがないですね・・・。やはり「暗黙のルール」があるのかもしれません。
このほか、ご家庭によっては、じゃがいもをいれることもあります。でもやはり、さつまいものが入っているのは見たことない・・・。

コツは、全部の具がくたくたに煮えてから、味噌をいれること。一旦味噌を入れてしまうと、その後いくら煮ていても、具が柔らかくなりません。その上、味噌の香りがとんでしまいます。そして味噌汁よりも汁の量は少なめです。
もうひとつ、注意すべき点は、家で打つ本格派でなくとも、市販の生麺を使うこと。乾麺は長期保存も可能ですし便利ですが、ほうとう独特のとろみがでません。

クリックすると新しいウィンドウで開きます

ほうとうは、野菜類のビタミン類や繊維質に特に富み、小麦粉や芋類によるデンプン質、味噌によるタンパク質などバランスに優れた料理です。
私が小さい頃、甲府市立の小学校では、学校給食にほうとうが出ていました。

ただ・・・小さい頃から慣れ親しんでいる味なので、地元の私たちにはおいしくても、他の地方の方の口に合うかはちょっとわかりません。
以前、九州からのお客様に「貧しい土地の食べ物だよね。山梨は土地もやせているし、あまり食べるものがなかったからでしょう。」と指摘され、「ほうとうって、本当はそんなものかもしれないなぁ。」と思いました。

山梨県では、つい最近まで3世代が一緒に住む大所帯が当たり前でしたので、大鍋で作り、余ったほうとうは再び翌日の食卓にあがる事もしばしば。とろみが出て味も熟れてくるので、大のほうとう好きだった祖父は、この「沸かし返し」が作りたてより好きでした。

県内ですと、大抵のスーパーや道の駅、高速のサービスエーリアで、ほうとうの生麺が売っています。冷蔵不要の麺もあります。通販でも購入可能ですので、試してみたい方はぜひどうぞ。

懐かしい家庭の味、ほうとう。
いまだに山梨に里帰りすると、何パックもほうとうの生麺を買って帰ってきては、実家の味を思い出しながらこちらで作ります。
それでもなぜか山梨で食べるのとは違う味。
「水や野菜の味が違うからかな。」と、しばし考えます。

ほうとうが「おごちそう」になるのには、「おいしい、おいしい。」と笑顔で話をしながら食べるおじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして子供たちが必要なのかもしれません。

ご実家が八百屋さんを営んでいた志村君(山梨日日新聞 2010年6月 記事)。
きっと、新鮮な野菜をたっぷり使ったお母さんの手作りほうとうを、ご家族皆で食べていたんでしょうね。

No comments: