前回に引き続き、3rdアルバム「Teenager」より「星降る夜になったら」です。
今日は歌詞を詳しく見ていきたいと、思います。
初めてこの曲を聴いたときの率直な私の感想は、「歌詞も音楽も全体的に軽い、明るい」「フジファブリックらしからぬ曲」でした。まるで80年代、90年代の「爽やかトレンディードラマ」と共通するような感じ、とでもいいましょうか。
人工的な軽さと明るさ。
例えば「ペダル」や「Teenager」のもつ明るさなどとは、全然別物の明るさです。
この印象をもったということは、金澤君の狙った「明るく健全なポップス」が、見事狙い通りに成功したことの証なのかもしれません。
「いつものフジファブリックらしくない曲だな。」というのが、第一印象でした。
何がそう感じさせたのか。
この記事を書くにあたって自己分析?してみた結果、なんとなく原因が分かったような気がしますので、記しておきます。
これはあくまでも個人的な意見ですので、あしからず。
それは、「歌詞にでてくる英単語」です。
「雲がドライブして」
「黙って見ている 落ちてくスーベニア」
日本人の日常生活であまりなじみのない英単語や表現も、使われていますよね。
例えば「スーベニア」。
英語の「souvenir」が元かと推測されますが、学生時代、「お土産、記念品」と先生に教わりました。
しかし、元々ラテン語の「心に浮かぶ、思い出す」を意味する言葉から派生している英単語で、直訳すると「旅行・場所・出来事などを思い出させるもの」となります。
旅に関していえば、思い出を心に留めておくため、主に自分のために買い求める記念品として購入したものが「souvenir」です。
一方、日本語の「お土産」は少しニュアンスが違います。
「旅先で求め帰り人に贈る、その土地の産物」「人の家を訪問する時に持っていく贈り物」(「広辞苑」より)が「お土産」で主に他者のために購入するものです。
さかのぼってみてみると、江戸幕府が行った特産品の奨励、また江戸後期にお伊勢参りや富士詣などの旅ブームにより、各地方ならでは特産品を旅人が買って帰る「お土産」文化が生まれました。日本独特の「村社会意識」の影響も大きく、平等を重要視するため、味が平均的で誰の口にも合い、大きさも形もそろった「??饅頭」のような土産物が好まれるという世界でも珍しい文化が発展しました。
(これは山梨のお土産「信玄餅」)
このような背景を考えると、英語の「souvenir」は、「旅先から買って帰ってきたgiftやpresent」に近いものです。
閑話休題。
フジファブリックの「星降る夜になったら」の中の「スーベニア」です。
カタカナ表記になってはいますが、あまり日本人の日常会話に登場する単語ではない上、ニュアンス的にも、英語の「souvenir」の方が「お土産」より歌詞に溶け込むような気がするのは、私だけでしょうか。
フジファブリックにしては、異例のカタカナ英語です。
志村君が曲作りで大切にしていた信条は、「日本人には日本語が一番伝わるはずだから、思いを伝えたるために、歌詞ではあまり英単語を使わない。」でした。日本語でいえるところをなんとなく格好いいから英単語で書くのは嫌だと、数々のインタビューで言っていました。
その信条の元、人の心をストレートに打つ曲が多数生まれたわけですが、この曲だけはスーベニアの他にもカッコイイ英単語がちりばめられていて、それがいつもとちょっと違う雰囲気を感じさせるのかな、と思いました。
でも、志村君の書く素晴らしい音楽と歌詞であることは間違いありません。
「いくつもの空 くぐって
振り向かずに街を出るよ」
この表現、なかなか凡人には思いつきませんが、言われるとはっとして心を捉えるすばらしいフレーズだと思います。
そしてまた(「Anthem」などにもでてきますね)、「雷鳴」がでてきます。
フジファブリックの曲に登場する雷や雷鳴は、とても新鮮で印象的です。
日本海側の気候と違い、冬に雪が降る前に雷が鳴るというようなことは山梨ではなく、やはり「雷」といえば「夏」のイメージが強いです。
真夏に雷鳴を伴う激しい通り雨が降り、その後、雨が上がり風に雲が流れ、柔らかな日がさしてくる。
そうこうしているうちに、雨が降った後の澄んだ空気の中、降るような星が空に輝く。
ポジティブな思いで誰かを、それとも何かを迎えに行くために、街を出て行く。
音楽の専門家ではないので、詳しい説明はできませんが、ピアノ音のキーボードと、サビにいく前になんともいえない間をとるベース、そして、サビで響くコーラス。
こんなに素晴らしい曲ですが、悲しい思い出がつきまとう曲にもなってしまいました。
志村君が亡くなった2009年12月24日から6日後の12月29日、30日に行われたフジファブリックが出演を予定していたロック・フェス。誰もいないステージでこの「星降る夜になったら」が流れました。
急遽出演がキャンセルになった2009年12月29・30日のフェスティバルの会場には、俄かに信じがたいその事実を確かめるように多くのフジファブリックファン・ロックファンが集い、当日演奏する予定だったセットリストそのままのライブ映像をみながら、誰もいないステージを大いに盛り上げた。(フジテレビニュースより フジファブリック・クロニクル)
あまりお勧めしたい映像ではないのですが、海外のファンにどれほど志村君が日本のファンに愛されているかを見ていただきたいので、あえて紹介させていただきます。
誰もいないステージ、ギターにおかれた帽子。
この気持ちを伝える上手な言葉は、見つかりません。
お聴きください。
「星降る夜になったら」
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