Thursday, 23 December 2010

心象スケッチ 

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まだ、山梨にいます。

今朝はそれほど冷え込みませんでしたが朝からものすごい風で、富士山の東斜面の雪が西からの強風にあおられ、雪煙になっているのが甲府盆地からも見えます。

深夜3時過ぎに、フジテレビのユースケ・サンタマリアさん司会の音楽番組に、「若者のすべて」が、とりあげられていました。
フジファブリックのホームページにも告知されていなかったので、見逃した方も多かったことと思いますが、Perfumeの3人が「今年めっちゃ聴いた曲」に「若者のすべて」を選び、「あの曲を聴かないとなれない感情があって、一年間楽屋でもあの曲ばかり聴いていた。」と説明していました。

「若者のすべて」だけでなく、フジファブリックの曲を聴くとなんともいえない気持ちになるファンの方は大勢いると思います。嬉しい、楽しい、悲しいなど単純な言葉では言い表せない感情で、志村君が創るどうしたらそんなメロディーが考えつくのかと不思議になる独特の音楽と、決して派手で大げさではないけれど心の芯の部分を打つ歌詞に、なんともいえない気持ちになるのです。
そしていつまでも心に残り、いつでも聴きたくなってしまう曲に変わっていきます。

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地元に帰ってきて、山梨の街や自然の中を歩きながら志村君の歌詞のすごさに改めて気づいたことがあります。
志村君の書く曲、特に自分の心情を自然の情景を通して書く曲の数々は、富士吉田の自然をそのまま写生して書いているのではなく、まったく富士吉田と違う環境(多くの曲は東京で書かれたのかもしれませんが)にいながら、「思い出」の中から厳選して書く心象スケッチだったのではないかということです。

先日、朝のうちに富士吉田に行く用事があったのですが、忠霊塔のある丘の中腹に白い雲がたなびいていました。少し高いところにある丘(山?)なので、朝は雲がかかることも多いと地元の方がいっていました。
まさに「浮雲」のようで感慨深く眺めていましたが、「桜の季節」に出てくる桜も、「陽炎」の街角にいる少年も、「赤黄色の金木犀」の金木犀の香りに急かされる僕も、「銀河」の澄み切った空気も、ただ自然の素晴らしさを心情に絡めて表現するのではなく、志村君の思い出の中にある出来事や思い、コト・モノを音楽という皆に伝わる形に具体化するため心の中で凝縮し、生まれ出てきたものだったのではないでしょうか。
あの朝、理屈ではなく、そのように感じました。
だからこそ、人の心を打つ曲ができたのではないかと思うのです。

その中には富士山の麓の大自然や街角の風景だけでなく、ご家族、友人など志村君に関わった多くの方々の姿もあります。それを思う時、フジファブリックの曲の数々が一層深みを増してくると思うのです。


とうとう明日で、あの日から一年がたとうとしています。

明日は日本中、世界中の多くのファンがそれぞれ思い思いの形で志村正彦くんを追悼することと思いますが、富士吉田を訪れ志村君の足跡をたどる旅を計画なさっている方もいらっしゃるでしょう。

志村君の見た風景の中を散策しながら、彼という人間とフジファブリックの音楽の基盤を作り育てた富士吉田の街、人、自然をぜひ生身で感じてみてください。「銀河」で志村君が伝えてくれた「冬の夜の澄み切った空気」を、吸い込んでみてください。
今までにもまして、フジファブリックの曲が心に響き、志村正彦という天才がなぜこの街に生まれたか分かるような気がします。

「銀河」 耳が凍りそうな冬の夜にふさわしい、フジファブリックの名曲です。

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