Friday, 3 June 2011

中毒性抜群「パッション・フルーツ」

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今年のバンコク、真夏がないまま(4月中旬が一年で一番暑い季節)乾季から雨季にそのまま突入しました。
温帯地方出身の日本人にとって、熱帯地方の雨季で印象的なのは、なんといってもバケツをひっくり返したように降る雨と、空をつんざく雷。窓からいくら眺めていても全然飽きないほど、魅力的です。
天地創造を思い出してしまうほどの雷鳴。日本にいたときには特に雷を怖いと思わなかったのですが、こちらに来てからは野生の本能が目覚めたのか?、稲妻と雷鳴に身の危険を感じるようになりました。

6ヶ月もの長い雨季の間、川から溢れる雨によって土は肥え、植物も動物も静かに、そして着実に成長していきます。
命の季節です。

そして、雨季はパッションフルーツの旬の季節でもあります。(と、タイ人はいいますが、通年スーパーで見かける気もします・・・)あの不思議な花とパッションフルーツの香り、南国にとってもよく似合います。

さて、フジファブリックの「パッション・フルーツ」です。
実はこの果物の爽やかな芳香と味からはかけ離れた歌詞となっております。
今日は、歌詞を詳しくみていきましょう。

まずファンの皆さんご存知のように、この曲はサビから始まる中毒性抜群の曲です!
一度聴いたら、「夢の中で あやかしパッション 響き渡るファンファーレ」がリフレインし、頭の中で鳴り止まらなくなること間違いなしです!!

志村君が伝えたかった「国籍不明感」と「謎の時代感」は、いったいどこからくるのでしょう。

まず注目したいのは、「あやかし」という言葉。
元々、「あやかし」とは船が難破するときに出るといわれる妖怪、別称「舟幽霊」のことです。
ファイル:SekienAyakashi.jpg



海上で転覆しおぼれた人の魂が、夜にまぎれて行き交う舟を沈めようと現れ出るという。
その怪異のはじめは、ひとにぎりの綿が風で飛んでくるように波に浮かび、やがてその白いものがすこし大きくなるにしたがい、面方が現れ目鼻がそなわり、友を呼ぶようなかすかな声がする。
するとたちまち数十の幽鬼が現れ、船端に手をかけて舟の走るのを止める。幽鬼は奇声をあげて、「いなた(舟人の言葉で大柄杓のこと)貸せ」という。そのときには、必ず底を抜いた柄杓を海上に投げ与えること。もし底のある柄杓を与えると、海水を汲み入れたちまち舟を沈めるという。

(「舟幽霊」 水木しげる「日本妖怪大全」より引用)

これから転じて、あやかしとは、不思議なこと、あやしくはっきりしないことを指す言葉となりました。ここの「パッション」は、おそらく日本語で多くの場合に使われる「激しい感情、情熱」と思われます。
「夢の中で あやかしパッション」のほうが、「夢の中で あやしいパッション」よりも怪しさの質がモノノケめいて?いるような気がしませんか。
その上舞台は「夢の中」。
すでに出だしで、私たちは気付かないうちに、フジファブリックの不思議ワールドに引き込まれていっています。

「響き渡るファンファーレ」
ファンファーレの起源は中世ヨーロッパに遡り、用いられる楽器は、主にトランペット(特に専用のファンファーレ・トランペット)やその他の金管楽器であるため、日本人にとって「西洋」のイメージが強いものです。よく目にするのは、ヨーロッパ王室の戴冠式などに代表される式典でしょうか。

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そして続く「踊る道化師」
こちらも中世のヨーロッパ色が強く、シェイクスピアの戯曲などにもしばしば登場する「宮廷道化師」、18世紀イギリスのサーカスでおどけ役をした「クラウン」、クラウンよりもさらに馬鹿にされる芸をする「ピエロ」などを全部ひっくるめて、日本語では「道化師」と呼びます。
ピエロの顔に描かれる涙マークは、馬鹿にされながら観客を笑わせているがそこには悲しみを持つという意味を表現したものであるとされ、しばしば悲壮感が漂うキャラクターです。

ここまでは、なんとなくヨーロッパ的な感じがすると思うのですが、どうでしょうか。

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「ゆうべの君は 悪の化身で 例えるならバンパイア」
バンパイアは吸血鬼のことで、「ファンファーレ」「道化師」と共に西欧のイメージです。これは、吸血鬼伝説がヨーロッパの伝承に起源をもつものが多いからなのですが、特に近代の映画などに出てくる吸血鬼は東欧ルーマニアの影響が強く、スラブ民族とキリスト教の文化が同時にみられますので、志村君がイメージしたバンパイアはこんな感じではと想像します。(吸血鬼伝説を紐解くと、話が長くなりますので割愛します。)

「甘く熟れた果実のようだね」
ここで初めて、前述の「パッション」と「甘く熟れた果実」で、「なるほど、それでパッション・フルーツかぁ。」と、私は勝手に連想。

ここまでだけでも、すでに「あやしさ」抜群です!

夜の町灯りに照らされ、一緒にいる二人。
一人は「僕」で、もう一人は・・・?
最初に聞いたときから小悪魔的な女性を想像していたのですが、改めて歌詞を見てみると、特にもう一人を「女性」と限定するような言葉もないのですね。
「揺るぎのない スマシ顔」「含み笑いが素敵だね」「メガネはどうか そのままで」などが、小悪魔的な女性を想像させたのでしょうか。

続けます。

「だからダメだったら 駄目だったら だめ」
だめが三回、カタカナ、漢字、ひらがなで書き分けることによって強調されていて、「こんがらがる秘密 暴いてく 謎とき ひもとき 深まる謎 ひとたまりもなく落とされては」
ここらへんも「あやしい」においが、ぷんぷんします。

その後サビが続きます。

言葉のリズムが素敵な響きをもつ「だからからかったら からかったら ダメ」の後、
「手を取り円を作らせてくれ 魔術師 手品師 手を変え品 そして禁断の約束しよう」

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手を取り円(サークル)を作る動作、魔術師、手品師。まるで魔方陣や魔女狩り、黒魔術を連想されるような、ここでもなんとなく暗~い「西欧」のイメージが漂いませんか。
そして「禁断」という言葉。アダムとイブが口にしてしまった「禁断」の果実を思い出すのは、私だけでしょうか・・・。

「国籍不明感」がどこで表現されているかと、歌詞をみてみましたが、どうも一貫して「西欧」のイメージが強いですね。
一方、「謎の時代感」は・・・中世と現代と混在しています。

この怪しく魅力的な歌詞に、あの音楽が流れるからこそ「パッション・フルーツ」になるのです!
次回、詳しく見てみたいと思います。

今日の一曲はもちろん、「パッション・フルーツ」。
一度聴いたら、一日中、頭に流れ続けますよ~~。


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