今日は4thアルバム「Chronicle」より、12曲目「ALL RIGHT」です。
スウェーデンにて、録音されました。
今までのフジファブリックにはない感じの曲で、最初に聴いた時には驚いたファンも多かったようです。
ハードロック調のギターで始まり、歌詞はおもしろいライム(韻を踏む)と音楽にのって調子よくすすみますが、人にいえない苦しさと孤独、志村君の心の叫びが張り上げる声で私たちに訴えかけてきます。「Chronicle」には、涙なくしてきけない曲が多いのですが、私にとってこの曲もその一つです。
Merrymakersがお別れの時に、「フジファブリックがこんなにロックなバンドとは思わなかった。」と言っていましたが(「Chronicle」付属のDVD参照)、ミクスチャーロックのような、ラップメタルのような曲です。
まず、歌詞の中のライムについてみてみましょう。
この「ライム」という単語、日本だとラップやヒップホップで使用される音楽用語のようですが、本来「韻を踏む」の意味ですので、英語圏だと「ナーサリーライム」(イギリス英語で、マザーグースなどの童謡の意味。幼稚園などで子供たちが日常的に歌う童謡です)のように、詩の世界でよく耳にする言葉です。
イギリスの学校ですと、年長さんでこの「ライム」を使った詩を書く授業があるほど、一般的であり国語の授業で重要視されています。
言葉の響き・音を重んじた「韻を踏む」という用法は、古くから日本文学にも存在したわけですが(恋心を和歌に読むのは、典型的ですよね)、これを歌詞とし音楽にのせて歌うというのは、また違うことです。
日本人アーティストによるラップは、日本語で歌われることが多いですが、日本語は英語とは文法や発声法、音韻が大きく異なるため、英語の用法をただ真似するわけにはいきません。
そのため、倒置法や喚体句などの修辞技法や、半韻や多重韻、英語風の発音が使用され、喋り言葉とはかけ離れた語調・文体となることが多いのです。(Wikipedia「ラップ」参照)
フジファブリックの「All Right」にでてくる、「轟音 爆音 騒音 雑言」も紙面上でみると日本語的ですが、英語風に音を重んじてみてみれば「go-on back-on so-on zoh-gon」ときれいな韻を踏んでいるのがわかります。「zoh-gon」だけは英単語として意味をなしませんが、残りの3語は英単語として存在するものなので、不自然な響きはありません。
「轟音」は、大きく響き渡る音。「爆音」は、発動機の音・爆発の音ですから、めちゃくちゃで混沌とした状態をイメージします。
「騒音」は、耳にうるさく感じる音・やかましい音。「雑言」いろいろの悪口をいうことやその悪口。煩わしいような憂鬱な、忌々しい感じが伝わってきます。
「一杯」「頂戴」。
「酔いたい」「叫びたい」。
ここでも母音「ai」で、韻を踏んでいます。
「粉砕」は、粉状に打ち砕くこと。転じて敵を徹底的に打ち破ること。「玉砕」は、玉が美しく砕けるように、名誉や忠義を重んじて、潔く死ぬこと。まるで戦争を思い起こさせる単語の数々です。
「いっさい」「がっさい」。
ここでは、「さい sai」の音で、韻を踏んでいます。
音だけではなく、韻を踏む単語がまとまったときにきちんとした意味をなしているのをみると、志村君の語彙力に脱帽します。適当に音を探すのであれば辞書を開けばいいでしょうが、意味も兼ね備えるには豊富な語彙力が必要ですから。
「パンチドランカー」という言葉、5th アルバム「MUSIC」では曲名になって戻ってきます。
ドランカーというと「酔っ払い」?と思いますが、パンチドランカーとは主にボクサーが頭部に強い衝撃や打撃を繰り返し受けて脳に異常をきたし、頭痛・認知障害・人格障害を起こす病気で、大酒呑みとは関係ないようです。
もう一つ、気になった「マスコットボーイ」と「マスコットガール」。
英語のmascotには「開運のお守り」「縁起のよい人・動物・もの」という意味があることから、チームや団体などのシンボルとして採用される若い男性や女性の意味で使われます。
そして、曲中で4度流れる「Yeah! All Right!!」。志村君の張り上げる声が、すべてを物語っていると思います。
All Rightを、直訳すれば「満足な状態にある。申し分ない。結構な。」ですが、英会話では声のトーンにより「わかった、わかった。いいんだ、これで。」という意味にも使われます。
- 「ねえ、今日忙しいから犬の散歩行ってくれる?」
- 「All right, all right...」(沈んだ声、またはあきれたりやけになった声で「わかったよ・・・。」状況に不満をもちながらも、しようがなくする様子が伺える)
そんな意味も含まれているのかな、と私は個人的に感じました。
今日の一曲は、「All Right」。
もういいんだよ、志村君。もう何も心配しないで、大好な音楽を、ただ楽しんでいればいいんだよ。
2 comments:
なるほど!
因みに私は「雑言」のところを「though gone」と捉えました!
コメントありがとうございます。
そうか!
「though gone」は、思いつきませんでした!
色々な見方があって、お話すると面白いですよね。
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