Monday, 15 December 2025

富士急行線 オリジナルヘッドマーク付き列車の運行のお知らせ

大月駅から富士山駅の間を走る 富士急行線。

期間限定で、2曲のもつ叙情的な雰囲気を一枚に表現したオリジナルデザインのヘッドマークを付けた車両を、運行いたします。 この取り組みには、「志村正彦さんの音楽を世の中に広く伝えたい」という思いが込められています。

富士急行線 オリジナルヘッドマーク付き列車の運行のお知らせ

【運行期間】2025年12月21日~2026年1月12日

【運行時刻】その都度、ホームページにて告知

注意:ヘッドマークは特定の車両に固定され、走行されています。そのため、同車両がどの時刻にどちらの方面に運行されるかは、当日まで未定です。決定次第、毎日、富士急行線公式ホームページ内にある「志村正彦さん特設サイト」にて告知させていただきます。

ファンの皆様、どうぞご了承下さい。


フジファブリックのインディーズ時代にリリースされた二つのミニアルバム「アラモード」「アラカルト」、メジャーデビュー後の1st アルバム「フジファブリック」のジャケットデザイン、FAB BOX III 【完全生産限定盤】 などを手掛けた柴宮夏希さんが、オリジナルヘッドマークもデザインして下さいました。

志村正彦さんの17回忌を迎えるこの季節。

オリジナルヘッドマークをつけた車両で、富士吉田の街に防災無線のチャイムを聞きにいらっしゃいませんか。特別な日になることと思います。


he Fujikyu Railway Line runs between Ōtsuki Station and Mt. Fuji Station.

For a limited period, trains featuring an original headmark design—bringing together the lyrical atmosphere of two songs into a single visual—will be in operation. This initiative is driven by the wish to share the music of Masahiko Shimura with a wider audience.

Fujikyu Railway Line: Announcement of Trains Operating with Original Headmarks

Operating period: December 21, 2025 – January 12, 2026
Operating times: Announced on the website as schedules are confirmed

Please note:
The headmark is fixed to a specific trainset and runs with that train. As a result, the exact time and direction of operation cannot be determined until the day of service. Once finalized, details will be announced daily on the Masahiko Shimura Special Website on the official Fujikyu Railway Line homepage.
We kindly ask for the understanding of all fans.

The original headmark was designed by Natsuki Shibamiya, who has also worked on the jacket designs for Fujifabric’s two indie-era mini albums À la Mode and À la Carte, their first major-label album Fujifabric, and FAB BOX III (Limited Complete Production Edition), among others.

At this time of year, marking the 17th memorial anniversary of Masahiko Shimura,

why not take a train adorned with this original headmark and visit the town of Fujiyoshida to listen to the disaster-prevention radio chime?
It is sure to be a special and meaningful day.

防災無線夕方チャイム音が、フジファブリック「茜色の夕日」に変更されます

今年もこの季節がきました。

山梨県富士吉田市の防災行政放送が、期間限定で同市出身のフジファブリック 志村正彦さん作詞作曲の「茜色の夕日」に変更されます。第29回目を迎えます。

詳細はこちらです。

富士吉田市役所ホームページ 夕方チャイム音変更「茜色の夕日」

【放送日:令和7年12月21日(日曜日)~27日(土曜日) 各日午後5時】

【曲:茜色の夕日】

【作詞・作曲 志村正彦】


冬の寒さ厳しいフジの里、凛とした空にチャイムを響かせます。

この企画は、フジファブリック志村正彦さんの音楽を通して富士吉田を感じてもらい、聴いた方の心に何か響くことを願うと共に、多くの市民に知っていただくことで地元に対する郷土愛や誇りを再認識していただき、子どもたちや若者が抱く夢や希望への後押しになればとの趣旨のもと実施しているものです。


 富士吉田市内の各所で聞くことができますが、おすすめの場所は、下吉田駅前ロータリー(山梨日日新聞のライブ配信が毎年行われます。ファンの方々も多く訪れる人気のスポットです。)、富士五湖文化センター(旧 富士吉田市民会館)です。忠霊塔は、音が反響して聞こえる可能性があります。


12月24日の天気予報は、「くもり」ですが、前後で雨が予想されています。吉田は富士山の麓の街なので坂も多いので、くれぐれも道路の凍結などにご注意下さい。お天気はこちらでもご確認できます。山梨県富士吉田市のお天気

直接足を運べないファンの方々には、毎年、12月24日午後5時に、山梨日日新聞社がチャイムのライブ映像を配信しています。もしお時間が合えば、こちらでご覧ください。

山梨日日新聞デジタル

ファンの皆様、気を付けてお越しください。志村正彦さんが愛した故郷、富士吉田を感じて頂けたら幸いです。

今日の一曲は「茜色の夕日」です。凍てつく寒さの中、チャイム音で流れる「茜色の夕日」が、天にいる志村君に届きますように。

Dear Fujifabric fans,

Once again, this season has come around.

For a limited period, the disaster prevention administrative broadcast in Fujiyoshida City, Yamanashi Prefecture, will be changed to “Akaneiro no Yūhi” (Crimson-Colored Sunset), a song written and composed by Masahiko Shimura of Fujifabric, who was born in the city. This year marks the 29th time this has taken place.

Further details can be found here:

Broadcast dates: Sunday, December 21 to Saturday, December 27, 2025
Time: 5:00 p.m. each day
Song: “Akaneiro no Yūhi” (The Madder Red Setting Sun)
Lyrics & Music: Masahiko Shimura, Fujifabric Vocalist and Rhythm Guitar

In the Fuji region, where winter cold is severe, the chime will resonate through the clear, dignified winter sky.

This initiative is carried out with the hope that people will feel Fujiyoshida through the music of Masahiko Shimura of Fujifabric, and that something meaningful will resonate in the hearts of those who listen. By making this project widely known among citizens, it also aims to help people rediscover their love and pride for their hometown, and to encourage the dreams and hopes of children and young people.

The chime can be heard in many locations throughout Fujiyoshida City. Recommended spots include the rotary in front of Shimoyoshida Station (where the Yamanashi Nichinichi Shimbun conducts a live broadcast every year—this is a popular spot that attracts many fans), and the Fuji Five Lakes Cultural Center (formerly the Fujiyoshida Civic Hall). At the Chureito Pagoda, the sound may echo and be heard resonating.

The weather forecast for December 24 is “cloudy,” but rain is expected before and after that day. As Fujiyoshida is a town at the foot of Mount Fuji, there are many slopes, so please take great care regarding icy roads. You can also check the weather here:
Weather in Fujiyoshida City, Yamanashi Prefecture.

For fans who are unable to visit in person, the Yamanashi Nichinichi Shimbun publishes a live video stream of the chime every year at 5:00 p.m. on December 24. If your schedule allows, please consider watching it there.

Yamanashi NichiNichi Shinbun Digital

To all fans, please travel safely. We would be delighted if you could feel Fujiyoshida, the hometown beloved by Masahiko Shimura.

Today’s song is “Akaneiro no Yūhi.” (The Madder Red Setting Sun)May the sound of “Akaneiro no Yūhi,” carried by the chime in the freezing cold, reach Shimura-kun in the heavens above.


Sunday, 7 December 2025

令和8年度改訂 高等学校用教科書 音楽Ⅰ 「MOUSA 1」に、フジファブリック「若者のすべて」が三期継続採用決定:第三回目記事

 教科書シリーズ最終回の今日は、「『若者のすべて』が実際、どのように教室で教えられているのか」。これはファンの皆様も、大変興味があるのではないかと思います。

まず、音楽の教科書「Mousa 1」の出版元、教育芸術社の販売する「指導書 教授資料」を見てみましょう。

日本には、国が定める学習指導要領と呼ばれるものがあります。文部科学省が全国の小・中・高校で、教育課程(ナショナル・カリキュラム)を編成する際の基準となるものです。要するに「『どの学年』が、『どの教科』で、『何』を学習するのか」を国が定めることにより、日本全国、どこの町や村で学校に通っていても、一定の教育水準に達することができるように作られています。


この学習指導要領に沿って、「各単元をどのように教えるか」を具体的に設計する授業の計画書(レッスンプラン)を「学習指導案」と言います。これは教師が独自のものを作成することもありますし、ある程度、各学校でひな型がある場合もあります。

「Mousa 1」の場合、学習指導案を含めた指導書と教授資料を、教科書の出版元が販売しています。教育芸術社 「指導書 教授資料」

こちらを見ると、「年間指導計画例に対応した題材ごとの評価基準例」というのがあります。「若者のすべて」を、生徒たちが学習した際に、何を評価基準とするかの例が、ここに書いてあるわけですが、とても興味があります。そのほかには:

「学習指導案 例」

「学習指導の流れ 例」

「指導のポイント」

「伴奏のポイント」

「楽曲について」

「ワークシート」


これらを元に、各教師が自分の授業計画書を設計していきます。想像するだけでわくわくしてしまいます。

全国の音楽教師が、「若者のすべて」を教材として、どのような指導をなさっているのか。一度でいいから授業に参加してみたいです。


元音楽教員であるコギトさんの記事をご紹介します。

「ムジクラス」【高校音楽】授業のコツとポイントまとめ「ポピュラーソングを取り上げると、生徒の反応が良いのがメリット」と書いてあります。文部省唱歌やクラシック音楽など、あまりなじみのない音楽を鑑賞する中で、「この曲知ってる!」という楽曲を、学校の教室で友達と一緒に習うのは、違う楽しみがあると思います。

また「原曲を聴き、ドラムに注目させ、どのようなリズムになっていてどんな曲調になっているか聴き取らせてみましょう。」とあります。「原曲」が存在するということは、「唯一ではないけれど、一つの表現の答えがある」ということだと、コギトさんは言っています。

フジファブリックが提示する、「一つの表現」

高校生の目には、どう映るのでしょう。

全国の高校生が、「若者のすべて」をYouTubeやCDなどの音源から、音楽の授業で聴いているという事実だけでも、感動してします。


東京都立秋留台高等学校の学習指導案が公開になっているのでご紹介いたします。

東京都立秋留台高等学校 音楽学習指導案

2学期の11・12月に「若者のすべて」を学習することになっているのが確認できます。「具体的な指導目標」に、「各曲の雰囲気を感じ取り、リズムやハーモニーを聞きながら演奏する」とあります。

また、「評価の方法」の項目には、

「観察」「実技テスト」「グループ活動」「振り返りシート」

と書いてあります。

どんな「観察」をして、どんな「実技テスト」があり、どんな「グループ活動」をして、「振り返りシート」で学習したことをどのようにまとめるのでしょうか。


教科書編修趣意書を、文部科学省が一般公開しているので、ここでご紹介します。

これは「Mousa 1」の出版元である教育芸術社が、学習指導要領に基づき編修した時に、「これが私達の教科書の特色です!」とアピールするために、文部科学省に提出した書類です。

編修趣意書 「芸術」教育芸術社

3ページに「若者のすべて」が出てきますが、「特に意を用いた点や特色」のところに

「自然や命を大切にする心、他者を思いやる心を養うことができる教材や、道徳的観点と関連付けて取り上げることのできる教材を含めました。」

と明記されています。


教科書選定委員会の意志を反映し、大阪府立高校の学習指導案はこのような内容になっています。

大阪府立高校 芸術 学習指導案

「親しみやすいポップスや効果 の旋律・リズムを知覚し特質や雰 囲気を感受しながら自己のイメ ージを持って、表現している。」

高校生が「若者のすべて」の「(原曲の)雰囲気を感受しながら、自己のイメージを持って表現する」こと。現場の音楽教師たちは、どのような指導をしているのでしょうか。


「日常の一コマに寄り添う音楽を」と願っていた志村君。

教科書に楽曲が掲載されるということは、この6年間、日本全国の高校生が「若者のすべて」を歌い、教材として学習し、歌詞を分析し、実技テストを受けることで、高校生たちの心にこの曲が刻まれます。まさにTeenager達の心に、志村君の書いた楽曲が残るのです。

青春時代に聞いた曲は、その後、さまざまな場面で頭に浮かぶ「思い出の曲」と成長していきます。今の高校生が大人になった時、「高校生の時に歌った『若者のすべて』、なつかしいね。」という日がいつか来るのです。そして一生、その子たちの人生に寄り添っていきます。

これこそ、ミュージシャン冥利に尽きることではないでしょうか。

3回にわたりおおくりした教科書シリーズは、今日で終了致します。

読んで頂きありがとうございました。「若者のすべて」という楽曲のもつ力、教科書に選定されることがいかにすごいことなのか。自分の魂のかけらを曲の中に埋め込んでいった志村正彦さんの素晴らしさ。

ファンの皆様に届いてくれたら幸いです。

富士吉田の防災無線チャイムのお知らせも、近日中に記事にいたします。

今日の一曲は「若者のすべて」です。音楽の先生がた、ぜひカップリング曲「セレナーデ」も一緒に聞いて頂きたいです。まさに「自然や命を大切にする心、他者を思いやる心を養うことができる教材や、道徳的観点と関連付けて取り上げることのできる教材」になりうる曲なのです。

Sunday, 23 November 2025

11月25日放送予定「マツコの知らない世界 防災無線チャイムの世界」 富士吉田市防災無線チャイム「若者のすべて」「茜色の夕日」が選ばれました

博識なことで知られるマツコ・デラックスさんの冠番組「マツコの知らない世界」。

芸能人や研究者、専門家ではなく、趣味が高じで活動を行う一般人が、没頭している大好きな「私の世界」の魅力を、独自の世界観からマツコさんに紹介、プレゼンするという番組です。

11月25日放送予定「マツコの知らない世界 泊まれる文化財・防災無線チャイムの世界」では、フジファブリック 志村正彦さんの故郷、富士吉田市の防災無線チャイムが取り上げられることとなりました。2025年現在、フジファブリック「若者のすべて」「茜色の夕日」(志村正彦さん 作詞・作曲)の二曲が、防災無線として使用されています。詳細はこちらです。

TBSテレビ「マツコの知らない世界」

TBSテレビ「マツコの知らない世界」公式X(旧Twitter)


平成28年6月13日に発表された「社会的文脈を重視した地域音環境マネジメントの方法」という研究成果書では、山梨県立大学 国際政策学部 准教授 箕浦一哉さんが、富士吉田市の行政防災無線のことを取り上げていらっしゃいます。

「夕方5時のチャイム」の公共性

「社会的文脈を重視した地域音環境マネジメントの方法」研究成果書


(「科学研究費助成事業 研究結果報告書 課題番号24510054 P3より引用)

この研究結果報告書には、富士吉田市で流れる「若者のすべて」「茜色の夕日」は、時報としての役割だけではなく、市民にとって「共有された物語を想起させる標識音」であり、「地域資源」となったと書かれています。また「富士吉田市という共同体だけでなく、志村正彦さんのファンという共同体を象徴する音という意味をもつことになった」とも書かれています。

2012年当時、富士吉田市役所職員として市役所に勤務し、若手職員プロジェクトの一員でもあった渡辺雅人隊長は、志村正彦さんを応援する富士吉田有志の会「路地裏の僕たち」の隊長も兼任する中で、2010年頃から届いていた市民からの幾つかの投書に心を動かされたと言います。

「志村正彦さんの曲を、防災無線に採用してほしい。」

早速、実現に向けて、雅人隊長は動き出しました。立ち上げ当初から、雅人隊長は一貫して同じことを言い続けています。

「富士吉田市の著名人として活躍し,平成 21 年 12 月 24 日 に 29 歳の若さで逝去したミュージシャン「フジファブリッ ク」志村正彦の音楽を,故郷富士吉田で周知することによ り,今まで知らなかった多くの市民に知っていただくこと で,地元に対する郷土愛や誇りを再認識していただき,子 供たちや若者の夢や希望への後押しになればと考えます。 また,志村正彦と故郷富士吉田を愛し続けてくれている, 全国のファンの人達への恩返しとして,命日である 12 月 24 日を中心に,路地裏の僕たちからのささやかなプレゼン トとして,故郷富士吉田から夕方 5 時のチャイムを響かせ ます。」

箕浦先生の論文にあるように、

ここに認められる企画の目的は,(1) 志村正彦氏の音楽 の周知,(2) 地域の魅力の再認識,(3) ファンへの恩返し, の 3 点である。 
(「夕方5時のチャイム」の公共性:山梨県富士吉田市の取り組みから The legitimacy of clock chimes sounded through public announcement system: A case in Fujiyoshida, Japan ●箕浦 一哉 Kazuya MINOURA 山梨県立大学/フローニンゲン大学 Yamanashi Prefectural University / University of Groningen:p5より引用) 

以前、このブログでもご紹介したこの論文でしたが、発表された2013年から12年の年月が流れました。改めて読んでみると、当時とはまた違う気持ちになります。


あの当時、フジファブリックの曲は、まだ今ほどの認知度はありませんでした。そういう中で、取り組みを始めて下さった雅人隊長の勇気と熱意とやさしさは、本当にありがたかったです。そして雅人隊長が選曲した「若者すべて」は、音楽の教科書に3期続けて掲載される名曲として、世の中に知られることとなりました。

13年を経て、今、また富士吉田の防災無線が、ゴールデンタイムの花形番組に取り上げられます。雅人隊長の情熱とやさしさがあったからこそ、今があると思っています。雅人隊長、感謝の気持ちは言葉では言い尽くせません。本当にありがとうございます。またその後、引き継いで下さっている市役所職員の方々、いつもありがとうございます。ファンとして心から感謝の気持ちを送らせて頂きたいと思います。

チャイムが街に流れるとき、この鐘の音が富士山の頂上を通り越して天を昇り、志村君に届きますようにと、祈らずにはいられません。

今年もあと一か月足らずで、チャイムの季節となります。

12月21日から27日までの一週間、期間限定で、夕方5時に「茜色の夕日」が富士吉田市に響き渡ります。ファンの皆様、特別な日の特別なチャイムを、志村君が生まれ育った街に、聞きにいらっしゃいませんか。富士吉田市民の皆様と、志村正彦さんのファンの皆様がチャイムを通して繋がる時間に、きっと天にいる志村君も繋がってくれていると信じています。

今日の一曲は、「茜色の夕日」です。急に寒くなりました。とっぷりと暮れる夕日の色は、一層鮮やかに見える事でしょう。

Sunday, 9 November 2025

令和8年度改訂 高等学校用教科書 音楽Ⅰ 「MOUSA 1」に、フジファブリック「若者のすべて」が三期継続採用決定:第二回目記事

 2000年代後半以降、文部科学省は「生徒の主体的な音楽活動の促進」「多様な音楽文化への理解」を重視するようになりました。

この流れの中で、子供たちが日常的に親しんでいる音楽を教材に取り入れる動きが強まりました。

「MOUSA」の版元編集者である今井康人さんは、インタビューで小中学校の音楽の教科書では、ロックやポップスは登場しないが、高校の場合、音楽の授業を受ける機会はこれで最後になるので、世の中に旅立っていく高校生にとって、より身近に感じる音楽を題材にするという傾向があると仰っています。Real Sound 「米津玄師「Lemon」、フジファブリック「若者のすべて」なぜ高校教科書に採用?版元編集者に聞くポップスの選定基準


ここからは、「なぜ教科書に選ばれることが、高く評価されるべき事象なのか。」について、詳しく見ていきたいと思います。

1.教育的適正    

前回の記事でもご紹介したように、歌詞の内容が学校教育にふさわしいかどうかが、大きな焦点となります。暴力、差別、性的表現など、教育上ふさわしくない歌詞は、この時点ではじかれます。

「若者のすべて」の場合、ロックでありながらも文学的な表現を得意とする志村君の歌詞は、青少年の育成という観点からも、高く評価されたというわけなのです。

2.発達段階への適合 

音域・リズム・メロディーが生徒達にとって歌いやすいものかどうかも問われます。これは、音楽という教科の基本的な指針です。

またリズム・ハーモニーもわかりやすく、バンドアレンジや合唱構成にも転用しやすいため、「歌って感じる」「演奏して分析する」両方の教材価値が認められます。

3.文化的・時代的意義 

日本の音楽史における代表的作品であるかどうか。時代を超えて評価される要素を持っているかどうかも、重要なポイントです。

「教科書の発行には企画から実際に生徒が使うまで3年ほどの期間を要するため、今流行している、という理由だけで楽曲を掲載することはありません。選定において重要なのは楽曲のパワーです。その楽曲が生き残っていく可能性がどれだけあるか。話題性に留まらず、音楽・詩そのものが持っている力がどれだけあるか、そういったものを見極めて選んでいます」(Real Sound 「米津玄師「Lemon」、フジファブリック「若者のすべて」なぜ高校教科書に採用?版元編集者に聞くポップスの選定基準 「掲載楽曲の選定基準」より引用


また文学的な歌詞は、音楽の教材としてだけでなく、国語的、情緒教育的観点からも優れています。生徒が歌詞を分析することで、言葉とメロディーが相まって、どのように感情を生み出すかを学べる構成になっていると思います。詩と音楽の融合なのです。

「卒業後も手元に残しておきたい教科書」という「MOUSA」のテーマにぴったりです。

「MOUSA 1」

4.共感性・社会性 

高校生が感情移入できるテーマを扱っているかどうか。

「若者のすべて」の場合、青春期の淡い恋心、花火や夏の終わりなど、高校生が自分の感情や記憶と重ねて感じ取ることができます。人生観、感情表現、言葉と音の関係を考察することもできる教材として価値があるのです。

学生生活の終わりを意識し始める年代の生徒達にとって、この曲は人生の通過点を象徴する教材になります。「一瞬の季節」「失われゆくもの」「青春時代の思い出の価値」というテーマは、高校生の心に響くテーマであり、フジファブリックの3rdアルバム「TEENAGER」に込められたテーマでもありました。

まさか14年の時を経て、現役のTeenager達の教科書に載り、アルバムに込めた同じテーマを考える教材になるとは、志村君自身も想像すらしなかったのではないでしょうか。

次回に続きます。

今日の一曲は、もちろんこちらの曲。「若者のすべて」です。

Sunday, 2 November 2025

令和8年度改訂 高等学校用教科書 音楽Ⅰ 「MOUSA 1」に、フジファブリック「若者のすべて」が三期継続採用決定

 令和4年度版(2022年発行)の高等学校用教科書音楽1「MOUSA1」に初めて採用されたフジファブリックの「若者のすべて」(志村正彦さん作詞作曲)。現在、全国の高校で使用されている令和6年度版、また来年度の令和8年度版にも継続採用されることが決定いたしました。MOUSA 1 令和8年度改訂版

3期にわたり継続採用されることが、なぜ特筆すべきことなのか。

教科書採用基準の厳しさ、教科書選定の手順などを詳しく見ていきながら、「若者のすべて」が教科書に採用されたことがいかに名誉なことなのかを探っていきたいと思います。

三期継続採用を記念して、今日からいくつかの記事に分け、詳しく書いていきたいと思います。


教科書の改訂は、何年ごとに行われるの?

教科書の改訂は、おおむね2~4年ごとに行われます。その都度、教科書選定委員がすでに掲載されている曲や新しく作成された候補曲のリストを見直し、厳正に選定していきます。そのため同じ曲が三回続けて採用されるのは非常に珍しいケースです。


「若者のすべて」は、なぜ三期継続採用されたの?

まず教材としての完成度があげられます(後日、改めて詳しく説明します。)。

「MOUSA」は、実際に高校で指導されている先生方が編集しているので、生徒や教師の側になって内容を熟考し、教科書作りをしているのが特色です。三期継続採用された大きな理由の一つは、教師と生徒達からの人気と指示、信頼だと思われます。


音楽の教科書に掲載する曲の選定は、どのような手順で行われるの?

1 文部科学省の学習指導要領に基づく枠組み

まず、出版社や選定委員会は、「学習指導要領」で定められている目標と内容を確認するところから始めます。


2 楽曲を審査

選定委員(音楽教育の専門家、教員代表、研究者など)は、以下の観点から曲を審査します。

                    ・高校生に合った表現内容であるか

                    ・高校生に合った音域であるか

                    ・音域に無理がなく、歌いやすいかどうか

                    ・音楽的学びを深める構成になっているか

                    ・歌詞の内容が教育的・倫理的にふさわしいか

                    ・高校生が共感し、興味をもてるか

                    ・多様な文化や価値観を尊重しているか

ここで、児童生徒のアンケートや現場教員の意見を参考にすることもあります。

3 著作権者との交渉

楽曲の著作権者に連絡を取り、交渉、手続きが行われます。「若者のすべて」の場合には、志村正彦さんの著作権を継承したご家族が、教科書への掲載を快諾したことになります。


4 著者と編集部が試演

                音域や演奏のしやすさなどを検討する

5 文部科学省による検定

完成した教科書案は、文部科学省の教科用図書検定を受けます。

検定では:

                ・学習指導要領との整合性

                ・教育的・文化的妥当性

                ・著作権処理の適正さ

など、色々な観点から厳正な審査が行われます。

合格後、正式に採用候補となり、各自治体の教育委員会で採択・使用されます。


次回は、「若者のすべて」がなぜ継続採用されているのかを、詳しくみていきます。

今日の一曲は「若者のすべて」です。今年は、この曲への注目度が、過去最高に上昇した気がします。どこかで流れていたのを、偶然聞いた方も多かったのではないでしょうか。

Monday, 13 October 2025

富士吉田市民合唱団 第68回定期演奏会 フジファブリック「茜色の夕日」がアンコールで歌われました

 山梨に里帰り中です。今回は偶然、日程が合ったので、富士吉田市民合唱団の定期演奏会を聴きに行くことができました。

 

三連休の中日、県外ナンバーの車の数に圧倒されつつ、富士吉田市内に入りましたら、さらに外国人の多さに圧倒されました!静かだった富士吉田が懐かしくなるぐらい、にぎやかな日曜日でした。

 

一方、いつもと変わらず富士山は美しく、小さな笠雲がかかってはいましたが、左右に伸びる裾野までくっきりと見えて、高い空に映えていました。

 

最後に市民会館に行ったのは、2019年の7月5、6日の上映会の時だったと思いますので、6年ぶりです。相変わらず富士山が間近に見えて、富士吉田市民のための市民会館という名にふさわしい立地だと思いました。

 

バイオリン独奏「アシタカとサン」、第一部のアヴェ・マリア4曲、第二部の「声が世界を抱きしめます」より谷川俊太郎 作詩の4曲。個人的には「海の比喩」という曲の人と海の壮大さが、詩と演奏によく表現されていて素晴らしかったと思いました。

 

15分のインターバルを挟んで、第三部「朝ドラソングメドレー」計7曲が演奏された後、いよいよアンコール一曲目、フジファブリック「茜色の夕日」です。

 

富士吉田市民合唱団の代表 渡辺公男先生自ら、志村正彦さんが富士吉田出身のミュージシャンだということ。上京してすぐに書いた曲が「茜色の夕日」だったこと。志村さんが凱旋ライブの時、この曲を歌い、感極まって歌えなくなってしまったこと。それほど思い入れが強い曲だったこと。富士吉田の防災無線のチャイムになっている曲だということ。志村さんのご家族が会場にいらっしゃっていること。をご紹介下さいました。会場は大きな拍手で包まれました。

ひとつひとつに地元ならではの温かみを感じ、これこそが富士吉田でフジファブリックの曲が演奏される醍醐味だと感じました。

 

ステージは淡く黄色い照明に照らされ、右奥には夕日を思わせる橙色のライトが灯されました。曲は男声コーラスから穏やかに始まりました。

 

「晴れた心の・・・」から、女声コーラスが加わり、澄んだソプラノが「晴れた心の日曜日の朝」を思わせ、透明な空気が会場を満たします。

 

「短い夏が終わったのに今・・・」では、あの物悲しさを

「僕じゃきっとできないな 本音を言うこともできないな」では、志村君の心の奥を

「君の小さな目から 大粒の涙があふれてきたんだ

忘れることは できないな そんなことを思っていたんだ」では、やるせない気持ちを

 

「東京の空の星は 見えないと聞かされていたけど

見えないこともないんだな そんなことを思っていたんだ」では、淡々とした気持ちを

聞きながら考えていました。

演奏後、会場は大きな拍手に包まれました。志村君の作った「茜色の夕日」が、また市民会館の大ホールに響いたのだと思ったら、感慨深いものがありました。

コンサートが終了し、席を立ち上がった時、一人のお母様と高校生ぐらいの息子さんの親子連れが、志村さんのご家族に話しかけていらっしゃいました。

「志村正彦さん、大好き。フジファブリック大好き。カラオケでいつも歌っています。まさか今日、ここで、志村さんのご家族にお会いできるとは思いもしませんでした。」

話をするお二人の顔は高揚していて、その興奮と感動が私達にも伝わってきました。

ふるさとを愛した志村君。ふるさとの人達に、こんなに愛されているのを見て、人の思いは循環するのだなと感じました。

改めて、素晴らしい音楽を遺していって下さった志村正彦君に、心から感謝したいと思います。

またこのような機会を作って下さった渡辺公男先生、富士吉田市民合唱団の皆様に感謝しております。

 

11月2日には、また富士吉田市新町文化祭で、富士吉田市民合唱団の皆様が「若者のすべて」と「茜色の夕日」を演奏して下さいます。ぜひお時間のある方はいらして下さい。


今日の一曲は、「茜色の夕日」です。