ご無沙汰しております。
今日のバンコク、朝から雨が降ったり止んだり、青空と雨空が半々に見えていて、変な天気です。これがもしや、数日前からタイ人が恐ろしげに語っている「嵐」の余波でしょうか・・・。
日本では、各地で今秋一番の冷え込みを記録したとききました。山梨県東部富士五湖(富士吉田のある地方)では、今日の最高気温が18度。
今日の富士山は冠雪しているそうですね。
山から吹き降ろしてくる冷気の運んでくる雪の匂いを嗅ぐと、山国の人間は季節が冬に向かって足早に過ぎていっているのを身に沁みて感じます。
今日は、「虫の祭り」について。
2004年9月29日、フジファブリックの通算3枚目のシングル「赤黄色の金木犀」のカップリング曲としてリリースされました。ちょうど金木犀の季節に合わせて、リリースされたのですね。
以前書いた記事はこちらですが(2010年10月11日付 「虫の祭り」)、今日は主に歌詞についてみてみたいと思います。
作詞作曲 志村正彦、編曲フジファブリックです。
フジファブリックのB面曲は、すべてA面になることができる実力派の曲ばかりですが、特に「四季盤」のカップリング曲は名曲揃いだと個人的に思います。
「赤黄色の金木犀」について、「匂いが香ってくるような曲にしたい」と、以前志村君は語っていましたが、嗅覚をくすぐるA面に併せて作ったカップリング曲は、想像の中で聴覚を呼び起こすという粋な手法が使われています。
恋人が去っていってしまった部屋に、一人残された自分。開けてある窓からカーテン越しに入り込むのは、秋の風だけではなく虫達の声。
祭りの様に賑やかに、花火の様に鮮やかに、聞こえてくる。
歌詞に登場する「花火の鮮やかさ」は視覚で、「祭りの賑やかさ」は視覚、聴覚、触覚で感じるものですが、聴覚で感じる「虫の音」を表現するためにこの二つの言葉を選ぶ志村君の文才には、いつも感動させられます。
その上、祭りも花火も言わずと知れた夏の季語であり、秋を代表する虫の音を描写するために使おうとは、凡才は思わないでしょう。そこが他の誰にも真似できない、志村君のセンスだと思うのです。
「にじんで 揺れて 跳ねて 結んで 開いて 閉じて 消えて」いくものは、なんだったのでしょう。
花火だったのか。
虫の音だったのか。
祭りだったのか。
それとも、祭りの様に過ぎ去った記憶の中にある何かだったのか。
あえてそれが何であるかを限定せずに、リスナーが自分の経験と記憶と想像力の中で、自分なりの「何か」をあてはめることのできる歌詞こそが、フジファブリックがフジファブリックである所以です。
一青年が、アパートの一室で(たぶん一階)、独り別れた恋人のことを考えながら部屋にいるという、よくありそうなシチュエーションを歌っているのですが、この曲を聴くと、なぜか不思議と懐かしい気分になります。
きっとこの曲の根底に流れるものが、もっともっと深いところから来るものだからではないかと思うのです。
ファブリックの作り出す音楽は、西洋にルーツのあるロックというジャンルでありながら、日本人が昔から愛でてきた「季節の移ろいから感じる色彩や音」が、大切に歌われています。そこが私たちの感じる懐かしさであり、心地よさであり、感激させられる元なのではと思いました。
「四季盤」含めフジファブリックの1stアルバム「フジファブリック」は、日本の音楽史に残る名盤だと思います。
もっともっと評価が上がっても、いいのでは?!!
ぜひ多くの方に一度でいいから聴いて頂きたいと、切に願って止みません。
今日の一曲は、「虫の祭り」です。
富士吉田では、金木犀が咲いているとききました。皆さんの街ではいかがですか。虫の音も、金木犀の花も、今から来る厳しい季節の前に、私たちを和ませてくれますね。
(「結んで開いて」の一節は、幼稚園のお遊戯の時間によく歌った童謡「むすんでひらいて」を思い出します。志村君が好きな歌だったのだろうか・・・。)
2 comments:
はじめまして。
オーストラリア在住の学生がコメントしております。
南半球は日本のある北半球とは季節が逆なので、今の時期がまさに夏の終わり、葉っぱが散り始める秋にさしかかっています。
きっかけは忘れてしまったのですが、先日この曲を初めて聴き、僕の現在の心情、境遇、もやもやしていた何かとこの曲の雰囲気がピシャンと合わさった気がしました。
叙情的で目を閉じながらずっと聴いていたくなるような曲ですね。
フジファブリックはあまり今まで聴いてこなかったのでが、これを機にほかの曲もいろいろと貪ってみたいです。
K.Lさん
お返事遅くなって、ごめんなさい。
海外出張で、すぐに対応出来ずにいました。
オーストラリアは季節が逆ですから、まさに「虫の祭り」の季節ですね。
故郷から離れると、季節ごとに風、光、におい、音など全てが妙に懐かしく、愛おしくなったりしますよね。外国に行く日本人は、大和魂燃える人になるか、滞在先の民族にすっかり溶け込むかどちらかに分かれると、以前言われたことがあったのですが、なんとなくその意味が今になるとわかるような気がします。
ぜひオーストラリアの地で、五感全部でフジファブリックの曲を楽しんで下さい。「虫の祭り」とカップリングされているA面「赤黄色の金木犀」も、嗅覚でも楽しめるレアなジャパニーズロック曲です。
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