令和4年度版(2022年発行)の高等学校用教科書音楽1「MOUSA1」に初めて採用されたフジファブリックの「若者のすべて」(志村正彦さん作詞作曲)。現在、全国の高校で使用されている令和6年度版、また来年度の令和8年度版にも継続採用されることが決定いたしました。MOUSA 1 令和8年度改訂版
3期にわたり継続採用されることが、なぜ特筆すべきことなのか。
教科書採用基準の厳しさ、教科書選定の手順などを詳しく見ていきながら、「若者のすべて」が教科書に採用されたことがいかに名誉なことなのかを探っていきたいと思います。
三期継続採用を記念して、今日からいくつかの記事に分け、詳しく書いていきたいと思います。
教科書の改訂は、何年ごとに行われるの?
教科書の改訂は、おおむね2~4年ごとに行われます。その都度、教科書選定委員がすでに掲載されている曲や新しく作成された候補曲のリストを見直し、厳正に選定していきます。そのため同じ曲が三回続けて採用されるのは非常に珍しいケースです。
「若者のすべて」は、なぜ三期継続採用されたの?
まず教材としての完成度があげられます(後日、改めて詳しく説明します。)。
「MOUSA」は、実際に高校で指導されている先生方が編集しているので、生徒や教師の側になって内容を熟考し、教科書作りをしているのが特色です。三期継続採用された大きな理由の一つは、教師と生徒達からの人気と指示、信頼だと思われます。
音楽の教科書に掲載する曲の選定は、どのような手順で行われるの?
1 文部科学省の学習指導要領に基づく枠組み
まず、出版社や選定委員会は、「学習指導要領」で定められている目標と内容を確認するところから始めます。
2 楽曲を審査
選定委員(音楽教育の専門家、教員代表、研究者など)は、以下の観点から曲を審査します。
・高校生に合った表現内容であるか
・高校生に合った音域であるか
音域に無理がなく、歌いやすいかどうか
・音楽的学びを深める構成になっているか
・歌詞の内容が教育的・倫理的にふさわしいか
・高校生が共感し、興味をもてるか
・他表な文化や価値観を尊重しているか
ここで、児童生徒のアンケートや現場教員の意見を参考にすることもあります。
3 著作権者との交渉
楽曲の著作権者に連絡を取り、交渉、手続きが行われます。「若者のすべて」の場合には、志村正彦さんの著作権を継承したご家族が、教科書への掲載を快諾したことになります。
4 著者と編集部が試演
音域や演奏のしやすさなどを検討する
5 文部科学省による検定
完成した教科書案は、文部科学省の教科用図書検定を受けます。
検定では:
・学習指導要領との整合性
・教育的・文化的妥当性
・著作権処理の適正さ
など、色々な観点から厳正な審査が行われます。
合格後、正式に採用候補となり、各自治体の教育委員会で採択・使用されます。
次回は、「若者のすべて」がなぜ継続採用されているのかを、詳しくみていきます。
今日の一曲は「若者のすべて」です。今年は、この曲への注目度が、過去最高に上昇した気がします。どこかで流れていたのを、偶然聞いた方も多かったのではないでしょうか。