Friday, 8 June 2012

お月様のっぺらぼう


ここのところ、フジファブリックの歌詞の英訳に集中しております。
毎回のことですが、志村君の書く歌詞は奥が深い!・・・深すぎる。「凡人の私には、とてもできないな。こんな大役をなぜ自ら・・・。」と、思う時もありますが、できるだけ志村君の使う言葉を崩さないように訳すのみであります。
能力の有無は別として、フジファブリックワールドを心から愛していることだけは確かなので、情熱一筋かんばろうと思います。

昨日は「花屋の娘」、そして今朝は「お月様のっぺらぼう」を訳していました。スーパームーンのこの時期に、ぴったりですね。



今日は、「お月様のっぺらぼう」です。初期の頃のフジファブリックらしい、いい曲です。

ミニアルバム「アラモード」(2003年6月21日リリース 詳しくはこちらを フジファブリック 「アラモード」)に収録されています。このアルバムがリリースされてから、もう9年も経つのですね。「アラモード」には、この他にも「花屋の娘」「追ってけ追ってけ」「消えるな太陽」「環状七号線」「笑ってサヨナラ」など、初期のフジファブリックを代表する曲が入っています。

夜遅く、一人ウトウトしながら夢うつつの世界を表現した幻想的な歌詞です。

では外国のファン向けに、まずは「のっぺらぼう」の説明から。
一般的に外見は普通の人間、でも振り返ってみると顔には目も鼻も口もないという日本の妖怪のことです。元々は妖怪の名前でしたが、凹凸がなく、すべすべした物体の形容にも用いられるようになりました。


西洋ですと、Nursery Rhyme (Mother Goose) の絵本などでお月様に顔が描かれ、擬人化されることも多いですね。志村君が知ってか知らずか、そこをあえて「のっぺらぼう」ということで、暗い夜空に白くのっぺりと?輝く印象を強くする効果があるのかな、と個人的には思いました。

「あー ルナルナ お月様のっぺらぼう」

この「ルナルナ」という言葉。
英語にも「Luna」「lunar」という月に関連する言葉がありますが(Lunaはローマ神話に出てくる月の女神)、元を辿れば月を表すラテン語の「luna」からきています。

中世以前のヨーロッパでは、月は不吉なものとして捉えられることが多かったようで、「満月の夜には殺人鬼が出る」「狼男に変身する」などの伝説が生まれました。この背景の中で、「lunatic」(狂気の、精神異常の、常軌を逸した)という英単語が生まれたのも理解できます。

この歌詞の場合には、語呂合わせ、言葉遊び的に使われているのだと思いますが、歌詞の与える不思議な感覚はそういうところに帰するのでしょうか。



「嵐がやって来そうな空模様」
前の「飴」と「雨」が韻をふんでいるだけかと思いきや・・・、

「あの空を見た 遠くの空には 虹がさした」
ご存知のように、虹は日の光がないと現れない自然現象です。夜の闇に光る月と、雨上がりに光る虹とが、昼と夜の美しいコントラストを描いています。

夢の中での出来事のように、あるいは宮沢賢治のいう心象スケッチのように(心の中に描き出される姿・形、心に浮かぶ像をまるでスケッチするように書き綴ること)、言葉が綴られていきます。
志村君だけが持ち得る天性の才能を感じる一曲だと思います。

英訳という作業を通して、志村君の書いた歌詞と真正面から向き合い、考え、感じることの幸せを、今朝改めて感謝しました。
フジファブリックとの出会いをありがとう。
こんな素晴らしい機会を頂いて、ありがとう。
そしてこんな素晴らしい曲たちを、私達に遺してくれてありがとう。
ただただ、感謝です。

今日の一曲は、「お月様のっぺらぼう」。
歌詞を見ながら、お聴き下さい。
志村君の「一人旅」、ぜひご一緒にお出かけ下さい。


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